「光る君へ」公任役・町田啓太が明かす思い 道長への「左大臣を辞めろ」は「僕の勝手な解釈なんですが…」
俳優の吉高由里子(36)主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)は17日、第44話「望月の夜」が放送され、町田啓太(34)演じる藤原公任が藤原道長(柄本佑)に左大臣を辞すように促した。公任は10代からの親友の道長に引退のきっかけを与えた。歌人として名高い公任を雅にチャーミングに演じている町田がスポニチのインタビューに応え、道長への思いや芸事への思いを語った。 <※以下、ネタバレ有> 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。 公任は道長に絶大な信頼を寄せていた。すけ子(すけ=おんなへんに成)(朝倉あき)の立后の儀に中宮・妍子(倉沢杏菜)の内裏参入をぶつけるなどダークな部分が濃くなる道長について、町田は「公任は道長がやることをポジティブに変換していた。何かを変える時は反発も大きい。誰かが変えていくなら道長に変えてほしいと思っていた」と語った。 ところが、第44話で「左大臣を辞めろ」と忠告する。公任の道長への思いについて、「気持ち自体は変わっていない。僕の勝手な解釈なんですが、道長は頑張りすぎだと思ったのだと思います。人に任せるところは任せるべき。欲張り過ぎという気持ちより心配の気持ち」と明かした。厳しい言葉の裏には青年時代を共に過ごしたからこその優しさがあった。「旧友の自分なら(左大臣を辞するべきだと)言える。敬意を持って話した。斉信(金田哲)や行成(渡辺大知)、俊賢(本田大輔)とかとも話して、僕が言うことになったんじゃないかな」。 公任自身はライバルだった斉信(金田哲)に官位を抜かれるも追いつくが、その後は実務に携わりながらも出世レースからは一歩引いている。「引かざるを得なかった。(父が関白を退いて)後ろ盾がなくなってしまった。陣の定めで発言してもそれが取り入れられるかは別問題。後ろ盾がある人が優遇される世界だと身に染みて分かっていく」。厳しい世界の中で模索して見つけた自分らしく輝ける道が芸事だった。「芸事の才能があることは自負していたし努力もしていた。立場と関係なく戦えるものだった。だからそっちにシフトしたんじゃないかな」と語った。 町田が披露する漢詩や龍笛の美しさと気品漂う所作は今作の世界観を支えている。「平安の世界観に凄く大事なことだと思って挑戦的にやらせてもらった」。特に漢詩が難しかったといい、「リハーサルの時に台本に書かれていたことの先の部分も頭にいれていき披露したら、指導の先生が“公任に見えました”と拍手してくださった。ハイライトとして自分の中に残っています」と振り返った。また龍笛は1回目と2回目で変化をつけたという。「1回目はエリート街道まっしぐらで、2回目は雲行きが陰りに陰っている。ただ演奏するだけではなくて、その時の自分の心情をどう表現するか。違う音色を出せたらいいなと思いました」と明かした。 公任の芸事への関心は「源氏物語」誕生のきっかけにもなる。「(まひろのことを)“面白え女”と思っていたんじゃないかな。この時代の中で芸事は唯一男女関係なくできた。そこが面白かったです」。 クランクアップを直前に控えた心境について、「ずっと(大河を)考えていた1年半だった」としみじみ。役作りのために伸ばしたヘアは肩まで伸びた。「終わったら髪を切りたいです。人生で1回くらい角切りにしたいです」と、すがすがしく笑った。「僕も俳優という芸術の世界にいる人間。芸術で誰もが認めるような能力はあって、1000年先までそれを残した公任は本当に偉大な方だと改めて思った。とても刺激を受けました。公任を演じることで僕自身ももっともっと頑張っていきたいという思いが増えました」。公任として約1年半生きたことで、役者としての決意をより一層強くした。