年金暮らしなのに…75歳以上「後期高齢者医療制度」の保険料はなぜ増額されたの?2024年度の平均保険料は前年度から「年間6083円」もアップ
保険料が値上げされることになった背景とは
今回、2024年と2025年に後期高齢者医療制度の保険料が段階的に値上げされることになった背景として、主に以下の理由があります。 ・出産育児一時金を引上げるための財源のため ・現役世代の負担軽減のため ●出産育児一時金を引上げるための財源のため 健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産した際には、出産育児一金が支給され、従来は原則42万円でしたが、2023年4月から50万円に引き上げられました。 出産一時金の財源の多くは、現役世代の医療保険などが充てられてきましたが、将来的に現役世代の人口が減少することが予想されます。そのため、これからは後期高齢者も含めた社会全体で子育てを支援する仕組みを構築するために、後期高齢者医療制度からも財源の一部を負担することになったのです。 ●現役世代の負担軽減のため 高齢者医療制度の財源は、年間にかかる医療費の5割を国や自治体などの公費から支出しています。そして、4割を現役世代からの「後期高齢者支援金」が財源に充てられています。なお、後期高齢者が納める保険料は1割です。 1人当たりが負担する保険料は、2008年の制度開始以降、高齢者が1.2倍になったのに対し、現役世代は1.7倍にも増加しており、大きな負担差が生じています。 そこで、後期高齢者が1人当たり負担する保険料と、現役世代が1人当たり負担する後期高齢者支援金の伸び率が等しくなるように見直されることになったのです。その結果として、後期高齢者が負担する保険料が増額されることになります。 では、後期高齢者医療制度の保険料はどれくらい増額されたのか。次章で確認していきましょう。
2024・2025年度に段階的に値上げに
後期高齢者医療制度の保険料は、2024年度・2025年度の2年間にかけて段階的に増額されます。 保険料のうち、「均等割額」は2022・2023年度は年額4万7777円でしたが、2024年度・2025年度には5万389円を負担することになり、2612円の増額です。 所得割率は、これまで9.34%であったものが2024年・2025年には0.87ポイント引き上げられ、10.21%になります。 これらにより、平均保険料額は2022年度・2023年度では年額7万8902円でしたが、2024年度には8万4988円となり6083円の増額に。さらに、2025年度には8万6306円になり2024年度よりも1318円の増額です。 被保険者が負担する保険料の上限額(賦課限度額)は、昨年度までは66万円でしたが、2024年度は73万円まで、2025年度には80万円までと段階的に引き上げられます。 なお、厚生労働省によると、年金収入が153万円相当以下の約6割にあたる方は、今回の制度改正による保険料の増額はありません。また、年金収入が211万円相当以下の約12%の方は、2024年度の保険料の増額はないとされています。保険料が増額されるのは、75歳以上の約4割の方になるとの予測です。 具体的にいくら増額されるのかは、年収により以下のように異なります。 年収が80万円の場合は、今回の制度改正で保険料の増額はありません。200万円の場合は、2024年度は増額なしですが、2025年度には3900円増額され9万700円になります。 400万円の場合は、2024年度には1万4000円の増額で23万1300円になり、2025年度も引き続き同額の負担です。1100万円の場合は、2024年度には6万円増額され73万円に、2025年度にはさらに7万円増額で80万円となります。