街頭演説妨害、車で追尾。「荒れる選挙」に警戒続く 相次ぐ社会福祉法人乗っ取り。法改正も、資金流出
▽社会福祉法人の乗っ取り事件 三重県鈴鹿市の社会福祉法人「かがやき福祉会」の運営権を違法に売買したとして、県警は2024年10月、元理事長の男ら4人を社会福祉法違反の贈収賄容疑で逮捕した。2016年の同法改正で監視機能の強化が図られたが、社会福祉法人を違法に乗っ取り、資金横領する事例が各地で発生。高齢者や障害者などを支援する公共性の高い団体が多く、運営破綻すると地域への影響が大きいため行政主導の防止策が求められる。 合併・買収(M&A)仲介サイトに掲載された約6千万円での法人売却情報がきっかけだった。 当時法人理事長だったネッツトヨタ神戸役員のA被告(58)=同法違反(収賄)の罪で起訴=に、B被告(53)=同法違反(贈賄)と業務上横領罪で起訴=が接触。2022年2月、指定人物に役員を変更するよう依頼し、見返りにA被告らが計3500万円を受け取ったとされる。 ▽「家族も家も失った」と語る被告
B被告は大学の後輩で元警察官のC被告(44)=同=を理事長とするなど役員を知人で固め法人を私物化。捜査関係者によると、理事会などを開かずに介護報酬債権を売却し、2022年7月には法人資金500万円を私的流用したとみられる。役員は逮捕後の調べに「違法と知らなかった」と話したという。 B被告とC被告は、有罪が確定した静岡市の法人を巡る事件に続き、同福祉会事件の公判が津地裁で始まった。C被告は取材に「家族も家も失った」と後悔を口にし、公判では「事実を全て話したい」と誓った。 ▽法改正も全国で事件続く 社会福祉法には、2016年の法改正で理事会の権限明確化や贈収賄に関する規定が盛り込まれた。役員の暴走抑止が狙いだった。 2021年に甲府市の法人の乗っ取りを巡る事件で初適用されたが、その後も福岡県糸田町、静岡市、東京都墨田区の法人で同様事件が続いた。理事会の機能不全や役員による資金流出が確認されたケースもあった。
社会福祉法人の運営に詳しい外岡潤(そとおか・じゅん)弁護士は「役員の法令順守意識の希薄さがある」と指摘、所管する厚生労働省は違法な例を周知するべきだと訴える。多くの法人は適切に運営し、私財を投じるケースもある。一部の不正を防止するため「行政の監視機能を強化する必要がある」と喚起する。