<米国が日本を軽視?>インド太平洋調整官不在が世界に与える懸念、日米が強化していた対中国・アジアの指導力は低下するのか
2024年2月7日付英フィナンシャル・タイムズ紙は、「インド太平洋調整官不在を同盟国は懸念」とのDemetri Sevastoplo同紙記者による解説記事を掲載し、キャンベル大統領府インド太平洋調整官が国務副長官に昇進し、同調整官の後任が来ないことで米国の中国の危険への集中を弱めるのではないかとアジアと欧州の同盟国は懸念しているとの見方を紹介している。 バイデン政権のインド太平洋調整官カート・キャンベルは上院で国務副長官への就任を承認され、より幅広い責任を担うことになった。大統領府は調整官の後任を置かないことを決めた。 このポジションは、米軍がその優先的戦略課題であり仮想敵国である中国への対応を先鋭化させるために設置され、中国の最新情報を追い、米国の対中外交政策のハブとなることを目指していた。後任を置かないとの決定は、既に同盟国が、中国リスクに対する米国の集中がウクライナ戦争、中東情勢、2024年の米大統領選挙で弱まると神経質になっている中で取られた。 多くの同盟諸国は、長年アジア専門家であるキャンベルがこれまで駐米各国大使と緊密に接触してきたことに鑑み、同人を大統領府内に失うことに神経質になっている。インド太平洋の同盟国は、キャンベルのお陰で大統領府の特別な関心とアクセスを得てきた。国務省では他の優先事項もあり、キャンベルは同レベルの注意を維持することはできないだろう。 キャンベルは、自分は引き続きアジアに集中できると語っているが、高官たちは懐疑的だ。選挙に直接影響を与える他の世界中の危機を考えれば、インド太平洋調整官の不在は、米国が仮想敵国に対し注意を維持することをより難しくするだろう。
元米国政府高官は、大統領府のアジアへの集中が失われるとの心配は誇張されているという。キャンベルは国務省で引き続きインド太平洋問題でも重要な役割を果たすし、この問題に対応する経験豊かなチームも居る。キャンベルが大統領府に居るかどうかより、バイデン政権が彼のイニシアティブへの集中を維持するかどうかの方が重要だという。 キャンベルはまた、中国の警告にもかかわらず欧州諸国がインド太平洋で一層重要な役割を果たすことを実現する上でも、大きな役割を果たしており、彼の異動が欧州に与える影響に対する懸念も大きい。大統領府のアジアでの指導力は不可欠だ。今やそれは失われ、補完されない。 これはアジアと欧州の同盟国に大きな懸念を生んでいる。米国は欧州をアジアに上手く巻き込んだが、今や梯子を外している。 * * *