「2000万あれば受けられると知り車を売って」代理母出産を選んだ山口敏太郎(58)の覚悟「この寂しさはきっとわからない」
山口さん:30年前に結婚してから、ずっと子どもがほしかったんですが、なかなか恵まれませんでした。10年以上、不妊にいいとされる鍼や漢方などを試しましたがかんばしくなく、カミさんにはいろいろ苦労させました。不妊治療の権威と言われる病院にも通いました。長年の治療はカミさんの体に負担を与えていたようで、6年ほど前にがんが見つかりました。悲しかったです。それから3年間、がんと闘う日々が続きました。 さいわい治療は成功して命を永らえることができました。でも子宮と卵巣を摘出してしまった。その時点でぼくら夫婦の不妊治療の道は絶たれました。ならば養子をもらおうと思い児童養護施設に電話しましたが、当時すでにぼくは50歳を超えていたので、定年に近い年齢では無理だと言われて。「ぼくはサラリーマンじゃないので、定年退職はありません。死ぬまで妻と子どもに不自由な思いはさせません」と伝えても「ルールだからダメです」の一点張りでした。
── それは、おつらかったですね…。 山口さん:これからどうしたらいいのかと悩みました。そんなとき「代理母」という言葉が頭をよぎった。残された方法は代理母出産しかないと思い、カミさんに打ち明けたら「3年間、がんの再発がなかったら考える」と言われました。
■有村昆さんに紹介され「2000万円あれば受けられると」 ── 実際に行動を起こしたのは、いつごろですか? 山口さん:2021年です。再発がなかったので「代理母をやってみたいんだけど」と伝えましたが、あまり好意的な反応ではなかったですね。「そこまでして子どもをもつ必要があるの?」と。でもぼくはどうしても子どもがほしかったので、何度も説得して、最後は折れてくれた。30年間、不妊治療も含めてぼくの希望のためにも頑張ってくれた妻ですが、自分にもいろいろやってくれたぼくに対する恩返しの気持ちがあると言ってくれました。
芸能界の友人に有村崑さんという映画評論家がいるんですが、フリーアナウンサーの丸岡いずみさんとの間にロシアでの代理出産で男の子を設けていました。そこで崑ちゃんに相談したら、快く代理母出産のエージェントを紹介してくれたんです。話を聞くと代理母が盛んなアメリカ、ロシアよりもウクライナがいちばん費用がかからず、諸経費込みで2000万円で受けられると。それでもかなり高額にはなりますが、車など売れるものは全部売って、ここに勝負を賭けようと決めました。