ニュースでよくみる「ウェアラブルコンピュータ」とは?
グーグルが開発中のメガネ型コンピュータ「Google Glass」やソニーが新たに発表した腕時計型コンピュータ「SmartWatch 2」の普及が現実味を帯びて来ました。アップルもソニーと同様の製品を発売するのではないかと噂されています。こうした身につけられるコンピュータのことを「ウェアラブルコンピュータ」と言います。スマートフォンのように普及するのでしょうか? ウェアラブルは、英語でwearableと書き、日本語では「身につけられる」という意味です。ジーンズの後ろポケットにスマートフォンを突っ込んで持ち歩く、いわゆる「ケツポケ」も広い意味でウェアラブルと言えなくもないでしょうが、ニュアンスとしては肌身に密着した形で身に付けるコンピュータをウェアラブルコンピュータと呼ぶことが多いようです。 ウェアラブルコンピュータは、古くからアニメや映画の世界で頻繁に登場します。 1965年(昭和40年)に放映が始まった白黒アニメ「スーパージェッター」では、主人公の少年ジェッターが「流星号、応答せよ」と腕時計型の無線で呼びかけて、主人公の乗り物と通信できるという機能を持っていました。腕時計型ウェアラブルコンピュータですね。 人気漫画「ドラゴンボール」(1984年)に登場するスカウターはメガネ型ウェアラブルコンピュータに相当するでしょう。キャラクターが身につけたメガネ「スカウター」が相手の戦闘力を測定し、その数値が目の前のディスプレイに映し出されます。通信機能も持っていました。 映画「プレデター」(1987年)のシリーズでは、エイリアンがウェアラブルコンピュータを駆使しています。腕にコンピュータを身につけ、自分の宇宙船を爆破したり、自爆したりと様々なコントロールに使っていましたし、エイリアンがかぶるヘルメットは熱分布を測るサーモグラフィーを目の前のディスプレイに映し出すことができました。 こうしたSF作品に登場したウェアラブルコンピュータが現実になると、どんな世界が広がるのでしょうか? 腕時計は時間を確認するための道具ですが、これに加えて天気やショートメッセージの着信が確認できるようなデバイスになります。これだけだとあまり未来を感じる世界には思えませんが、自爆機能は必要ないとして、注目されているのは、AR(Augmented Reality、拡張現実)を使ったサービスとの融合です。 セカイカメラというスマートフォン用のアプリがあります。類似のアプリもダウンロードして試すことができますが、スマホのカメラを街にかざすと、建物の名前や地下鉄の駅がどの方向にあるのかという情報がスマホの画面に映し出されます。 こうした機能は、いちいち手に持ったスマホを目の前にかざすより、メガネ型のディスプレイに情報が映し出されるのことになれば、道順を示してくれるなど利便性が高まると期待されています。 スポーツなどに用途を限ってみると驚くほどに機能的です。カナダのRecon Instrumentsという企業が開発したのは、スキー用のゴーグルをウェアラブルコンピュータに仕立てた製品です。GPSを内蔵し、ゴーグルには速度や高度、気温、最高速度などが表示され、腕に装着したコントローラーで操作することが可能。インターネット通販などで日本でも購入できます。 ただし、ウェアラブルコンピュータには問題もあります。これを身につけて街を歩くには、格好が悪いという指摘もありますが、それ以上に問題なのは、プライバシーやマナーの問題です。 Google Glassは、ビデオ撮影の機能が搭載されているため、「知らないうちに自分が撮影されてしまうのではないか?」「顔認識機能と融合することで、いま目の前を歩いているのが誰なのかが分かってしまうのではないか?」「更衣室やトイレに持ち込むべきではない」という議論が巻き起こっており、アメリカでは店内での利用を禁止する飲食店も出て来ました。 ウェアラブルコンピュータ普及のカギを握るのは、ほかでもない使い勝手です。腕時計型デバイスの通話機能はどうでしょう? 実際にやってみると、手首に向かって話し続ける姿勢には無理があります。誕生日パーティーの様子をビデオに収めるのにメガネ型のデバイスの方が操作性に優れていると言えるでしょうか? スキー用ゴーグルの例に見られるように用途を限ってみてみると、これまでに考えられなかった体験ができるようになります。技術的には実現できるレベルまで来ているだけに、スキューバダイビングやバイクのゴーグルに応用してみたら? と考えてみるだけで楽しい世界が広がりますね。