富士山と宗教(9) 解けない謎、なぜ溶岩の末端に神社があるのか?
溶岩の末端から湧き出る富士の水
山宮浅間神社の由緒については、第8回で述べたとおりだ。溶岩が流れた年代としては、山宮の地よりも浅間大社の地の方が相当古いわけだが、社記による神社の由来は、山宮の方が古い。 山宮から現在の富士山本宮浅間大社のある場所に社を遷す以前、そこには富知神社があったと伝えられている。そして、その場所は、1万年前に流れ出た溶岩の下から水が湧き出ている場所であることを考えれば、富士山の水が湧き出る神聖な場所として、坂上田村麻呂による社殿造営のはるか以前より神が祀られていた場所だと想像することは難くない。 溶岩の端に位置しているという点では同じでも、山宮浅間神社の地と富士山本宮浅間大社の地とではやや性格が異なるようにも思える。 富士山を遥拝する山宮浅間神社から、なぜ湧水の地に社を遷したのだろうか? 三島の浅間神社のように、なぜ溶岩の流れが止まった場所を崇めて神祠を建てたのだろうか? 現代の科学は、富士山噴火の溶岩の流れを明らかにした。しかし、富士山の溶岩と祈りとの関係は、今もってつまびらかではない。