「バカ」「頭下げない」高速バスでの恐怖体験 “カスハラ”と“クレーム”の線引きは? 弁護士が明かす3つの判定基準
ゴールデンウィーク最終日の6日、高速バスの運転手に理不尽なクレームを浴びせる男性の姿をカメラが捉えていた。 【画像】土下座を要求すればカスハラ、頭を下げる謝罪はカスハラとまでは言えない 難しい線引き 男は、岩手県JR盛岡駅を午後2時40分頃に出発する高速バスに乗り込むと、満席で一番前の補助席しか空いていなかったことに腹を立て、「バス会社の要領が悪い」と責任者を要求。 運転手をバカ呼ばわりし、警察も出動する事態となった。 男性の言動はカスタマーハラスメントと言えるのか。 カスハラ問題に詳しい亀井正貴弁護士に聞いた。
クレームの内容、回数、声の大きさ
ーーどういう行為がカスタマーハラスメントに該当する? 「身体的」もしくは「精神的」な攻撃に該当するものがカスハラにあたります。 身体的な攻撃は、暴行や傷害。 精神的な攻撃は、侮辱や暴言を吐く、名誉毀損、脅迫などがあります。 今回のケースでいうと、「バカ」「じじい」「補聴器付けているのか?」は暴言の類に入ります。 これらは侮蔑的な表現でもあるので、「侮辱罪」や「名誉棄損罪」という犯罪も成立しうる状況です。 仮に犯罪が成立しなかったとしても、労働者に精神的な攻撃を加えていますから、カスハラにあたり得ると思います。 また、態度がしつこいかどうかもカスハラの判断要素の1つになります。 ーークレームとカスハラの違いは? 発言の「内容」や「態度」「時間」がポイントになります。 相手を傷つけるような言葉かどうか。 大声か、普通の声で言っているのか。 普通の声だったら単なるクレームとして処理されます。 また、大声で言った場合も、1度だけであればクレームの範疇になる可能性があり、回数や内容を総合的に判定することになります。
土下座を要求すればカスハラ
「頭を下げない」などと運転手を威圧し続けた男性は駆け付けた警察官に事情を聴かれた後、次のバスに乗り換えたというが、この騒動でバスの出発は約25分遅れた。 カスハラはさまざまな要素の総合的な判定となるが、「土下座の要求」と「頭を下げる謝罪」とでは、判断が分かれると亀井弁護士は話す。 ーー25分程バスの発車時刻を遅らせたが? バス会社に対する「威力業務妨害」や「偽計業務妨害」が成立しうる状況になりますが、警察の対応もこの25分間に含まれているのであれば、時間的にはカスハラの長さにはカウントされません。 あくまでも運転手に対して、どれだけの時間暴言を吐いたか、侮辱的な表現を行ったかが判断材料になります。 ーー典型的なカスハラのパターンは? いくつか類型化された行動パターンが例示されていますが、その中で精神的な攻撃に当たるものは、土下座の要求や執拗な言動です。 これに脅しが加われば「強要罪」も成立します。 謝罪を求める時、土下座を要求すればカスハラになりますが、頭を下げる謝罪だったらカスハラとまでは言えません。 自分の行為がカスハラと認定されないためには、クレームの内容に脅しが入っていないことや、普通の声でしつこくない範囲で相手に要求を伝えることがポイントになります。
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