遺跡巡り初の勉強会 三重・大台町栃原・新田地区 地元の地史を考える会
県文化財保護指導委員の奥さん招き、遺物など調査
三重県多気郡大台町の栃原地区の住民らでつくる「栃原の地史を考える会」(積木明代表、12人)は6日午前9時から新田の日進公民館などで、県文化財保護指導委員で考古学専門の奥義次さん(79)=多気町田中=を講師に招き、「新田地区の先史時代にタイムスリップしましょう」と題した勉強会を初めて開催。同会のメンバー約10人が参加し、栃原・新田地区の先史時代の遺跡を巡り、古代の人が手掛けた遺物の手掛かりを調査するフィールドワークも行った。
同会は地元の行事や歴史などを調べ、地域の人や子供たちに伝えていこうと2016(平成28)年に発足した。 栃原と新田地区には、旧石器時代から古墳時代に該当する主な遺跡が20カ所近くあり、中でも奥さんの父・義郎さんが1960(昭和35)年ごろに発見した後期旧石器時代の出張遺跡(栃原)が代表的。 この日はまず大台町の遺跡の特徴について、奥さんが講義した。奥さんは、出張遺跡の発掘調査で2万点以上のナイフ形石器などが発見されたことに触れ「これだけの規模の石器が見つかったのは近畿、東海地方でも指折りで異次元」と重要性を強調。「弥生時代に(福岡県の)北九州から伝わった農耕文化がいち早く取り入れられ、茶畑の中にその時代の遺跡が残っている」と話した。 また1級河川・宮川の上流から上質なチャート(堆積岩の一種で角岩のこと)が流れて来たことからチャートの加工が盛んに行われ、打製石器を削る際に出た大量の破片を今でも見つけることができると紹介した。 その後、メンバーたちは、事前に許可を取った栃原・新田地区内の3カ所の遺跡を巡り、実際に旧石器時代に人工的に削られたチャートの破片を調査し、奥さんから解説を受けた。中には、縄文時代前期に奈良地方からもたらされたサヌカイト(火成岩の一種で安山岩のこと)や、縄文土器の一部も見つかった。 奥さんは「遺跡は地元の人に大事にされることが大切。特に土器は割れることが多く、盛んに作られたので、小さな破片一つでもその地域の変遷がよく分かる。多くの遺跡が残っているので、ぜひ、こまめに見てほしい」と話した。また注意点として、遺物を発見した場合は拾得物になるので、警察への届け出を忘れないようにすることとの説明もあった。 同会の積木代表(76)は「子供たちにも教えられるよう、まずは自分たちが知っておかなければならない。この地区の遺跡を大事にしていきたい」と話した。