川上麻衣子、私が出会った粋な呑兵衛「石倉三郎さんはお猪口の首を振るんじゃなくて横にスッと飲む」
10代から女優として活躍している川上麻衣子さん。昨年は、一番の話題作とも言っても良いNetflixシリーズ『地面師たち』にも出演。リリー・フランキーさん演じる刑事の妻役を演じた。お酒好きとしても知られる川上さんに、人生で出会った粋な呑兵衛、そして50代終盤での人生観の変化について聞いた。 【関連画像】Netflixシリーズ『地面師たち』場面カット * * * 川上麻衣子です。今回の年末年始は最大で9連休の方もいらっしゃるのだとか。いつもよりゆっくり起きて暖かいこたつに入ってクーッと一杯!って最高ですよね。 私もいっちゃいますよ、ク~ッと冷やで! ビールじゃなくて日本酒でね。よく驚かれるんですけど、私の場合「とりあえず、日本酒で」っていうのが常なんです。夏場はもちろんですが、冬の寒い時期でも冷やで飲みます。おすすめは石川県の「天狗舞」。飲み口が軽快でしっかりした旨みと後口のキレがいいお酒です。アテには塩味のあるなめろうとか。あれでちびりちびりとやるのがもう至福のひと時ですね。 一昨年、吉田類さんと『にっぽん百低山』(NHK)で一緒に山登りをさせていただきました。類さんといえば、お酒をこよなく愛す通称・酒場詩人。酒好き、酒場好きな人でこの名を知らない人はおりません。その類さんと福岡県太宰府にある「宝満山」と大分県国東市の「両子山」と二つの山を登ったんですが…。 私、百低山を甘く見てました(苦笑)。百名山になると登山道が作られていたりするそうなんですが、百低山と呼ばれている山は道がなくてかなりハード。しかも、ロケの時に豪雨はあるわ、登れども登れども先の見えない石段が続くわで、もう足腰ガタガタ。でも、頂上に着いた時のあの達成感は何ともたとえようのない爽快な気分でした。 それに、下山した後の類さんとの乾杯が、これまた疲労困憊だった体にじわっと染みわたって(笑)。こんなおいしいお酒が飲めるなら、また山登りに挑戦してもいいかな、なんて思いました。 豊かな人生を送る類さんの生き方は私も目指したいところ。他にも粋な飲み方をするなぁと印象に残っているのが石倉三郎さんです。 石倉さんの奥様は下町の元置屋だったところで割烹料理店を経営なさっているのですが「麻衣子ちゃん、本当の酒飲みってのはさ、これが嫌なんだよ」って、お猪口を口につけて首を上げる仕草をするんです。真の酒飲みはいちいち首を上げたり下げたりするのも面倒で、やっぱりいきつくところ盃だと。時代劇でもよく見かける盃って平らじゃないですか。首を振るんじゃなくて横にスッと飲む。 石倉さんのこの発言は「なるほど!」と思いましたし、粋でカッコいい飲兵衛だなぁって思いましたね。反対に下衆なお酒の飲み方をする方というのもいらっしゃいます(苦笑)。バブル期に割と見かけた光景なんですが、「この店で一番高いワインを出せ!」という…。 当時、藤村俊二さんが青山でワインバーをやっていらしたんですが、私、そこが好きでよく通っていたんです。地下みたいなところにおひょいさん(藤村)の部屋があって、そこで安価でも本当においしいワインを飲んでいたところ、カツーンカツーンと靴の音を響かせ、席に座るなり「一番高価なやつ!」って。私はそういうの、苦手なんですよね。そんな私が50代も終盤にさしかかった頃、暮らしに大きな転換を迎えました。