暑さと終盤上りが焦点の東京五輪マラソンコースはどんな選手がメダル獲る?
2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が男女マラソンコースを発表した。19年11月完成予定の新国立競技場がスタート・ゴールで、浅草・雷門や銀座、東京タワー、皇居など都心の名所を巡るコースだ。組織委員会の発表会に出席した室伏広治スポーツ局長は、「史上最高のオリンピックコースになる」と胸を張るほど、TOKYOの魅力が詰まったロケーションになる。 折り返しは、増上寺と二重橋前付近の2つ。最高点は標高約34m、最低点は標高1m。コース全体で考えると、アップダウンはさほどない。 しかし、今回のコースにはランナーたちを苦しめるポイントがある。それが「高力坂(こうりきざか)」を含む37km付近から約30m駆けあがることになる上り坂だ。かつて東京国際マラソン(1981~2006年)や東京国際女子マラソン(1979~2008年)の勝負どころであった難所が、東京五輪という舞台で、再び注目を集めることになる。では、五輪コースはランナーの目にどう映っているのか。 2000年シドニー五輪女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子アスリート委員長は、「序盤が下りでリズムに乗りやすい一方、終盤は上りなので、最後まで勝敗の行方がわからないドラマチックな展開になるのではないでしょうか。体力、知力を兼ねそなえた選手が勝つコースだと思います」と話す。 今回のコースを見たとき、筆者はふたつのシーンを思い出した。1991年東京世界陸上の男子マラソンと、2003年の東京国際女子マラソンだ。ともに終盤の上り坂が勝負の分かれ目になった。 1991年東京世界陸上の男子マラソンは谷口浩美が市ケ谷駅前からの上り坂でスピードアップ。4人の先頭集団から抜け出して、歓喜のゴールに突き進んだ。1997年の東京国際女子マラソンは、トップをひた走っていた高橋尚子が終盤失速。高力坂でエルフィネッシュ・アレム(エチオピア)にかわされ、アテネ五輪代表の座を逃している。 東京五輪のコースは序盤と終盤の約7kmが東京国際マラソンとほぼ同じで、現在の東京マラソンとも約3分の1が重なっている。2019年9月以降に行われる東京五輪の代表選考会であるマラソングランドチャンピオンレースは、本番と近いコースが予定されている。そういう意味では日本のファンにとっては「お馴染みのコース」で、日本代表選手にとっても「走り慣れたコース」といえるだろう。