「経済・物価の改善続けば利上げ」と植田日銀総裁、時期は明言せず
Takahiko Wada [東京 25日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は25日、経団連の審議員会で講演し、経済・物価情勢の改善が続いていけば「それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが必要になる」と述べた。ただ、緩和度合い調整のタイミングやペースは「今後の経済・物価・金融情勢次第」と述べるにとどめた。国内外のさまざまなリスク要因を十分注視するとし、次期米政権の経済政策や来年の春季労使交渉(春闘)に向けた動向を注目ポイントに挙げた。 植田総裁は次期米政権の経済政策を巡る「不確実性は大きい」と指摘。米国の政策運営は米経済・物価のみならず「世界経済や国際金融資本市場にも、大きな影響を及ぼし得る」とした。 春闘については、経団連の十倉雅和会長が2025年は24年に加速した賃上げの流れを定着させ、「構造的な賃金引き上げを実現したい」と発言したことに対して「私も同感だ」と述べた。その上で「重要なことは、2%の物価上昇と整合的な賃上げを当たり前のこととして社会に定着させていくことだ」と語った。 植田総裁は、2%目標の持続的・安定的な実現に向けた移行期に当たる現在は、「景気・物価に中立的な中立金利よりも政策金利を低くすることにより緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりサポートしていく」考えを示し、「デフレ・低インフレ環境に逆戻りすることは避けなければならない」と述べた。 短期の実質金利が「大規模な金融緩和を行ってきた13年以降のほとんどの局面よりもかなり低く、緩和度合いが強まっている」と指摘。これは予想物価上昇率の高まりによるもので、「2%目標の実現により、金融政策で経済を刺激する余地が拡大するメリットがすでに一部顕在化していることを示している」と語った。 日銀は今年3月に大規模緩和を終了、7月には利上げと国債買い入れの減額計画を決めた。植田総裁は今年を振り返り、賃金と物価の好循環が徐々に強まり、物価目標の持続的・安定的な実現に向けて「着実な前進が続いた1年だった」と述べた。その上で、25年は「好循環が一段と強まり、賃金の上昇を伴う形での2%の持続的・安定的な物価上昇の姿にさらに近づくと予想している」とした。