<頂点へ>2020センバツ明石商/1 けん引役、期待の新主将 /兵庫
「日本一を目指すには、やっぱり来田が主将だ」 履正社(大阪)に1―7で敗れた2019年夏の甲子園準決勝から、約2週間後。狭間善徳監督(55)は新チームの主将に来田涼斗外野手(2年)を指名した。迷いはなかった。伝えられた来田選手も「自分がやるしかない」と覚悟を決めた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 近年の明石商の活躍は目覚ましい。19年は春夏連続で甲子園4強入りを果たし、秋の国体にも出場した。10月のプロ野球ドラフトでは水上桂捕手(3年)が楽天から7位で指名され、入団を決めた。 新チームには、旧チームで主力を張っていた来田選手、中森俊介投手(2年)が残る。実力、経験とも同世代トップレベルの2人が投打の軸となるだけに、周囲の期待は高まり、全国のライバル校は警戒を強める。新チームにかかるプレッシャーは、かつてなく大きい。 不利な条件もあった。夏の甲子園に出場した分、新チームの発足が遅くなったのだ。強豪校として避けられない道とはいえ、スタートの出遅れは痛い。これらの事情を考慮し、狭間監督は来田選手を主将に選んだのだった。「チーム全体が高い意識を持つには、来田が主将をやらなあかん」 履正社に敗れた翌日の朝、さっそく新チームで初練習をした。ここから約2週間、2年生の主力が日替わりで主将を担うのが伝統だ。「新主将セレクション」とも言うべき期間で、来田選手は、いつもより率先して声を出したと振り返る。「今までは上級生に引っ張ってもらった。新チームでは経験の多い自分がその役割を担うんだという思いを込めた」。その熱意が狭間監督に伝わったのだった。 旧チームには、18年夏の甲子園のベンチ入りメンバーが8人もいた。だが、新チームには、わずか4人。3季連続で甲子園の土を踏んだ来田選手、中森投手以外は、ほぼ総入れ替えと言える。「チームの成熟度は今年の方が劣っていた」と狭間監督は語る。 新チーム発足から間もない9月半ば、19年秋の県大会が始まった。まだチームとして固まらないまま、「新明商」はセンバツをかけた戦いに臨むことになった。 × × × 3月19日に開幕する第92回選抜高校野球大会で、初の頂点を目指す明石商。新チーム発足から、2年連続3回目の出場を決めるまでの道のりを5回に分けて振り返る。 〔神戸版〕