「海上自衛隊」前代未聞の不祥事には“続き”があった 航程表も供述調書も「誰でも見放題」の異常事態
〈今更ですが、不正受給という悪習を断ち切るどころか、常態化している現状に乗って実施していたことに深く反省致します〉
これは潜水艦救難艦「ちよだ」の潜水員の供述調書の一部である。 どうしてこんな書類が本誌(「週刊新潮」)の手元にあるのかは後述するとして、海上自衛隊の不祥事が立て続けに明るみに出ているのはご存じの通り。安全保障にかかわる「特定秘密」を無資格者に扱わせていたとして、関係者が処分されたのは7月12日。加えて、同日には日常的に「潜水手当」を詐取していた海自所属の潜水士の処分も発表されたのだ。 防衛省担当の記者が言う。 「不正があったのは特殊な技術で深海に潜る飽和潜水の訓練に伴う手当です。潜った深さや時間に応じて支給されるのですが、架空の訓練や潜水時間の水増しといった手口で過大に請求していた。6年間で4300万円の水増し請求が認められ、潜水士4人が逮捕、11人が懲戒免職となり、48人が停職という事態になりました」
不祥事の“続き”
前代未聞の不祥事となったわけだが、この事件、表沙汰になっていない「続き」がある。 海自の関係者によると、 「海上自衛隊では、各部隊から隊員に向けられた“お知らせ”を見ることができる『ガルーン』というシステムを導入しており、4万人の隊員全員が閲覧可能となっている。そこに潜水士たちの調書が名前入りでアップされていたのです。供述内容はもちろん、預貯金、家族構成、住宅ローンなど個人情報もそのまま出ていました」 それだけではない。 「アップされたファイルには『ちよだ』の乗組員名や航程表、艦艇の一日の記録も含まれていました。これらの情報は国防上、見られる人間が極めて限られているはずです」(同) その海自の関係者から入手したファイルを見ると、たしかに〈0600総員起床〉、〈1716日没、航海灯をつける。灯火管制とする〉、〈0800各科訓練開始〉などとあるではないか。 海上幕僚監部広報室に聞いたところ、 「調書を海自隊員全員が見られる状態にあるというので調べてみましたが、確認できませんでした。過去にそうしたことができたのかについては調査中です」 こんな体たらくで、わが国の海防は大丈夫なのか。 「週刊新潮」2024年9月5日号 掲載
新潮社