ボーイング、廃止される宇宙プロジェクトと宇宙事業部門の売却リスト
新型旅客機737 MAXで発生した墜落事故は、ボーイング社に慢性的な経営不振をもたらした。2018年のライオンエア610便、2019年のエチオピア航空302便で発生した事故は、どちらも新しく搭載された失速回復システム(MCAS)に原因があった。 【画像】うまくいかないボーイング社の宇宙事業部門、売却される可能性も 同社の2024年の第3四半期決算(7-9月)をみると、その最終損益は61億7400万ドル(約9693億円、1ドル157円換算)の赤字であり、9四半期連続の赤字となった。 2023年の総売上高は779億ドル(約12兆2303億円)。うち44%を旅客機などの「商用サービス」、32%を「防衛・宇宙」が占める。航空事業が不振であれば宇宙・防衛ビジネスで補われるところだが、近年では宇宙事業も苦境に立たされ、宇宙関連部門や関連子会社の売却が検討されている。 ■開発コストを回収できない宇宙船 ボーイング社の新型宇宙船「CST-100 スターライナー」は、2024年6月、初めてヒトを乗せて飛行テストを行った。しかし、ISS(国際宇宙ステーション)に接近する途中、機体からヘリウムガスが漏れるトラブルが発生し、機体姿勢を制御するスラスターにも不具合が生じた。ISSには無事ドッキングしたものの、NASAはスターライナーを無人で地表へ戻すことを決定。クルー2名は後続機で帰還することになった。当初このミッションは8日間が予定されていたが、クルーはこのトラブルのよって約9カ月間、2025年3月までISSに留まることを余儀なくされた。 スターライナーはNASAのCCP(商業乗組員プログラム)に選定された機体であり、NASAから資金援助を受けるものの、機体の開発製造から運用まで、そのすべてをボーイング社が自社事業として担う。支援金だけでは開発できないが、その後の人員輸送サービスをNASAが継続的に購入することにより、ボーイング社ははじめて利益を得ることができる。 スターライナーがCCPに選定されたのは2014年であり、獲得した支援金は42億ドル(約6594億円)。ただし、開発遅延でコストが大幅に超過し、定期運用も実現できない状態にあるため、採算の目途がまったく立っていない。 NASAとの契約は固定価格制のため、開発途上でその費用が膨らんでもNASAからの支援金額は変わらない。その結果、ボーイング社のスターライナー事業における予算超過は、2024年10月時点で18億5000万ドル(約2905億円)に上る。