『あのクズ』“海里”玉森裕太のボクサーとしての過去が明らかに 岡崎紗絵の複雑な表情も
「だったら今のあなたは殴る価値もない」 葛谷海里(玉森裕太)のボクサーとしての過去が明らかになってきた『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)第3話。7年前、海里と対戦した相手が試合後に亡くなっていた。試合中の事故が原因だったようだが、彼自身がそのことをずっと引きずっていた。そして、それは当時海里のセコンドを務めていたゆい(岡崎紗絵)も同じだったようだ。 【写真】先輩ボクサー(大東駿介)と話す黒髪時代の海里(玉森裕太) 7年間、父親(渡部篤郎)のボクシングジムの手伝いをしながらも、これまで一度も誰のセコンドも担当してこなかったということは、彼女の中でも7年前で時間が止まっているのだろう。ほこ美(奈緒)のバンテージの巻き方を見ればそれが海里仕込みであることをすぐに見抜き、複雑な表情を浮かべるゆい。ほこ美のミット打ちの姿には、海里との思い出を重ねてしまう。 そして海里が7年前に負傷させてしまった相手は、やはり彼にとって憧れだったのであろう先輩ボクサー(大東駿介)だったようだ。彼が教えてくれたボクシングの真髄が、海里の口からいまだに自然に飛び出す。 「ボクシングは相手を敬うスポーツ。おんなじだけ苦労をしてきた相手を尊敬する。だからこそ全力でぶつかって殴るに値する」。そう教えてくれた先輩に全力でぶつかって殴った拳が、まさかその命を奪ってしまうなんてあまりに皮肉すぎる。 また7年間誰のセコンドも務めてこなかったゆいに、そうとは知らず「ゆい、セコンドやるんでしょ? ゆいは強いな」と言う海里も、その海里の言葉に合わせて平気なフリをしてしまうゆいも切ない。 ただ、ほこ美によって持ち込まれたボクシングイベントの専属カメラマンの仕事を、海里は引き受けることにした。7年前の出来事に囚われ続けていた海里に見られたせっかくの前進の兆しにもかかわらず、その機会を奪ったのもやはりまた7年前の話だった。彼のその出来事を持ち出して役所の公的な専属カメラマンには不適切だという声が上層部より挙がってしまい、契約を打ち切られてしまう。直接の原因は富岡議員(橋本じゅん)に届いた無記名の封筒に入ったタウン誌だったが、一体誰がこんなことをしたのだろうか。イベントには代理のカメラマンの手配までされていたことからも、悟(倉悠貴)が怪しく思える。何だか悟からは海里にずっとクズのままで居続けてほしいというような気持ちが見え隠れしているように思える。 そんな事情があるとはつゆ知らず「やっぱりやめた」とうそぶく海里に、ほこ美は冒頭の言葉を投げかける。海里を殴ることを目標に始めたボクシングだったが、海里に教えてもらったボクシングのあるべき姿になぞらえると、「同じだけの努力をしていて、そういう苦労を乗り越えた者同士尊敬し合っているから思いきり殴れる」ということなのだとすれば、今の海里はほこ美にとって殴るに値しない相手ということ。 どんどんほこ美を起点に海里の世界をボクシングが侵食し始める。自分がこっそり海里の店に通いながら様子見していた時には一切変化のなかった海里が、いろいろと新しい取り組みや気持ちごと受け取り変化していこうとする様子が、ゆいにとってはどうやら面白くないようだ。同じところでつまずいていてほしい海里が前を向くという変化を受け入れられないのは、実はゆいの方なのかもしれない。
佳香(かこ)