トランプがテレビや新聞を追い詰めた?…凋落した主流メディアに未来はあるのか
有力紙の及び腰に読者は反発
ギャラップ社の調査でアメリカ人の半数以上がメディアに「大いに」あるいは「まずまずの」信頼を置いていると答えたのは、03年が最後だ。 当時はイラク戦争が泥沼化する前で、ジョージ・W・ブッシュ大統領は60%台前半の支持率を保っていた。経済は停滞を脱し、住宅バブルの波に乗って改善しつつあった。バブルが世界金融危機に火を付けるのは、まだ数年先の話だ。 マーティン・ガリーは元CIA分析官で、現在は政治とメディアの関係を研究している。彼は14年の著書『大衆の反乱と権威の危機』で、主流メディアが失速し始めたのはデジタル情報の爆発的増加がメディアの権威を損ない、その欠点を浮き彫りにした時期だと指摘した。 力のバランスがエリートから大衆へと傾き、「民主主義政府を支えてきたジャーナリズム、学術界、科学界の権威が一斉に疑問視された」と論じた。 クレアモント・マッケンナ大学の政治学者ジョン・ピットニーは、「今では人々は多種多様な情報源から情報を得ている」と述べる。「政治の議論を主導するのはSNSだ」 だがSNS上の議論でも報道機関は重要な役割を果たしていると、ピットニーは考える。報道への批判であれ報道の一部を都合よく切り取るような場合であれ、「SNSで盛り上がる政治的話題の大半は、主流メディアが出どころだ」。 さらにピットニーは7月、ペンシルベニア州バトラーで起きたトランプ暗殺未遂事件を引き合いに出す。あの日撮影された中で最も注目を集めたのは、AP通信社のフォトグラファーがiPhoneではなくプロの機材で撮った写真だった。 「主流メディアが果たすべき役割は今もある」と、彼は言う。選挙戦終盤には、大衆の心が離れたことを主流メディアが自覚した兆しも見られた。 共に大富豪が所有する民主党寄りのロサンゼルス・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は、ハリスへの支持を見送ると発表。後者のオーナーであるジェフ・ベゾスは、これを読者の信頼を回復するための「信念に基づいた決断」だと説明した。 しかしナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の報道によれば投票日直前の同紙の発表に読者が反発し、購読解約は20万を超えたという。 新たなトランプ時代は失った信頼を取り戻すチャンスだ。結局のところ第1次トランプ政権はメディアを活性化した。チャンスを生かすのか、滅びの道をこのまま突き進むのか。道は二つに一つだ。
カーロ・ベルサノ