国も認めた芸術作品が「18禁アニメ」「アダルト・ビデオ」と同じ扱い? 映画の配給元が「映倫」を訴えた理由
映倫の審査の仕組み
映倫の審査では内容に応じ、作品が以下の4区分にレイティングされる。 ・G(年齢にかかわらず誰でも鑑賞可) ・PG12(12歳以下は保護者等の助言・指導が必要) ・R15+(15歳以上が鑑賞可) ・R18+(18歳以上が鑑賞可) 今回、映倫は同作をぼかし付きの条件で「R18+」とレイティングした。だが、浅井代表は、これを不服として再審査請求(2017年10月12日)、再々審査請求(2022年2月1日)まで要請。その結果、「男性ヌードの写真15点について修正が施されない限り『区分適用外』」と判断された。 この”区分”とは、「映画館での上映は不適切」という判断で、〈児童ポルノ、わいせつな図画など非合法な素材、描写を含む作品〉〈ドラマ性、ストーリー展開などが希薄で、もっぱら著しく刺激的な性行為や残虐な暴力などの描写に終始する映像〉、いわゆる18禁アニメやアダルト・ビデオなどと同じだ。実質的に商業映画館での上映は困難となり、配給元は経済的に大きなダメージを被ることになる。 レイティングにあたり映倫は、描写の仕方やリアリズムの度合い、音楽・音響などの効果、そして時間や場所、問題描写の連続などの編集・構成を含む文脈なども含め、総合的に考慮するとしている。今回の作品では、映像内で写真集を紹介するようなシーンであり、文脈にわいせつ性はないという。
映倫審査に反対しているわけではない
「2017年の展示会では、メイプルソープの作品以外の男性ヌード写真も多く展示されていました。当時から数年経ち、社会におけるわいせつと芸術の概念も変化があると思われます。 そもそも映画館は、見る人をゾーニングで限定しやすい空間でもあります。最高裁判所が認めたメイプルソープ写真の表現の自由という点において、無修正での『R‐18』レイティングをお願いします。 アップリンクは、映倫審査に反対しているわけではなく、映画を観るまで内容がわからない表現形態であるので、ガイドラインとしてのレイティングには賛成という立場です」(浅井代表) 写真集では10年をかけて“表現の自由”を勝ち取った浅井代表。映像でも、作品の芸術性を訴え、表現への「制約」に対し異を唱える。
弁護士JP編集部