「アソコを見せて何が悪い」公然わいせつで逮捕された「伝説の踊り子」がした衝撃の「言い訳」とは
警察の尋問
一条の芸は崇高だ。警察は彼女を逮捕し、裁判所が有罪にするかもしれない。ただ、神様はきっと、彼女を罪に問わない。小沢はそう確信していた。 「神様」は、そして「お上」は一条にどんな判断を下すのだろう。注目の裁判が始まる。 大阪地検は1972(昭和47)年5月10日、一条さゆりを公然わいせつの罪で起訴した。逮捕から3日しか経っていない。 福島署の取り調べで、一条は引退公演のときに撮られた自分の裸を見せられた。容疑の認否について問われた彼女は弁護士とも相談し、全面的に認めることにした。情状を訴え罰金刑にしてもらう狙いだった。1ヵ月前に夫と2人で寿司店を開いたばかりである。実刑になったら、店はどうなるのか。借金をしてまで開いた店だった。とにかく実刑だけは避けたかった。 警察は一条が容疑を認めたことに安心し、誰に命じられたのかとしつこく聴いた。このころになると、彼女は警察が何を狙って、どんな質問をしてくるかを熟知している。警察や検察はできれば劇場経営者を起訴に持ち込みたかった。
衝撃の言い訳
一条はどれだけ追及されても、 「ファンが大切やから、自分で脱いだんです。遠くから、私の裸を見にきてくれたファンもいるのに、見せないわけにはいきません」 と答えている。ただ、取調官は、「他の踊り子はみんな経営者から命じられたと認めている。あんただけがそれを否定した場合、公判での心証が悪くなる」と説いた。結局、彼女も経営者から命じられたと認めざるを得なかった。 一条は若い取調官との雑談で、こんなことを問うている。 「なんでアソコを見せるのがそんなに悪いんですか。見たくもない人を相手に股を開いているわけではないですよ。おカネを払って来ている人に見せているだけです」 「あんたたちが裸を見せると男が興奮するやろ。レイプが増えるんや」 「劇場からの帰りにお客さんが女の子を襲ったといった話は聞いたことありません。お客さんはトイレに入って、自分でやったりしてたので、むしろ気持ちよくなって帰ったんです。男の人はあたしの裸を見て、欲求を自己処理していたんです。むしろ、あたしが踊っているから、レイプが減るんじゃないですか」 ストリップが防犯に寄与しているとする説には、取調官も苦笑するばかりだった。 『「世間をごまかしていない」現役の東京大学講師も感激した「伝説のストリッパー」の生き様』へ続く
小倉 孝保(ノンフィクション作家)