国会議事堂

　石破茂首相が首相就任前に衆院解散を表明し、波紋を広げている。異例の表明に法的な問題はないのか。憲法に詳しい中央大副学長の橋本基弘教授に聞いた。 【写真】模型を手に寝台特急の魅力を話す石破氏 　―今回の解散表明をどう見ますか。 　フライングだ。解散を決めるのは内閣であり、そもそも首相になっていない人が解散表明することは見識を疑う。9月30日の時点で、首相はまだ岸田文雄氏だった。 　―衆院解散の法的根拠は何ですか。 　憲法7条に、天皇の国事行為として「内閣の助言と承認」により衆院解散するとある。ただ、あくまでこれは儀礼的なもの。それが拡大解釈され、時の内閣による衆院解散が定着している。 　本来、内閣による解散権を定めるのは憲法69条の方だ。内閣不信任決議案の可決、または信任決議案が否決された場合のみ、「10日以内の解散」か内閣総辞職をしなければならないとある。 　―自由に解散できるわけではない、と。 　政権が制約無しに解散できるとは、多くの憲法学者は考えていない。国論を二分する政策転換や予算審議の紛糾など内閣不信任案が出されるような政治状況では「解散もやむを得ない」との考え方が主流だ。 　それなのに、解散を政権維持の道具にする首相が多い。安倍晋三氏は「国難突破」などの理由で解散を繰り返した。石破氏も「勝てる」と踏んだのだろうが、解散に抑制的だった立場を変節させたのは残念だ。 　―解散判断はどうあるべきでしょう。 　与党が有利な局面でしか解散しないと公正な選挙結果を生まない。勝者と敗者が固定化され、有権者の政治への失望感は広がる。解散前に与野党でしっかり議論し、争点を明確にするべきだ。