「そば弁亭」で94年に発祥、セイコーマートの「ホットシェフ」 札幌から離れた足寄店でこっそりと
商品研究と店員教育を徹底
ホットシェフが愛されている最大の理由はおいしさだろう。商品開発では「本物を研究する」ことを徹底し、メニューごとに発祥店や有名店を食べ歩く。「手間はかければかけるほどおいしい」(赤尾社長)という信念で、調理工程や味に妥協しない。お客さんが買える値段を考慮しながら、どこで勝負するのかという同社の「売り」を明確にして、差別化を図っている。 ホットシェフ売上額1位のカツ丼は、トンカツを1日かけて解凍し、店内で卵をとじることで半熟のふんわりとした仕上がりとなる。米は店内で炊いており、店頭に並べられるのは出来上がりから6時間までだ。 どの店舗も同じ仕上がりで提供するために大切にしているのが、店員への教育。ホットシェフの製造トレーナーが指導し、店舗を回るスーパーバイザーが日頃から品質をチェックしている。 日本生産性本部(東京)による顧客満足度指数調査では、セイコーマートがコンビニ部門9年連続1位とお墨付きを得ている。同社にとってホットシェフは、来店の目的となる商品の一つであり、「一番重要な商品」と赤尾社長。 全国的にはコンビニ市場は大手3チェーンの寡占化が進む中、セイコーマートは道内シェア1位を堅持しており、「ホットシェフがあるからうちのチェーンが残っているのは間違いない」と強調する。
赤尾社長が再挑戦したいこと
定番商品の一つに店内で焼き上げるバタークロワッサンがあるが、近年は専用の設備がある100店超で、「十勝小豆の粒あんぱん」や「メロンパン」なども焼いて販売。売り上げも伸びており、今後もホットシェフのベーカリー部門を強化していく考えだ。 加えて赤尾社長は「昔スパゲティなどでやっていた、注文を受けて調理する受注生産にもう一度チャレンジしたい」と夢を語る。おいしさへの徹底したこだわりと新たな挑戦をし続ける姿勢が、道民の胃袋をつかみ続けている。(大海雪乃)