<頂きへ!・センバツ2023大垣日大>/2 序盤の得点力重視 「観察眼」磨き情報を共有 /岐阜
「ここが山場だ」。昨年9月17日の秋の県大会3回戦。大垣日大は大野レインボースタジアムで帝京大可児との大一番に挑んでいた。帝京大可児は2020年のプロ野球ドラフト会議で投手が指名され、昨年夏の県大会では準優勝するなど、近年力を付けてきた強豪だ。1、2回戦でコールド勝ちした大垣日大は阪口慶三監督(78)もナインも接戦を見込んで気を引き締めていた。 四回に山口直次郎(2年)が低めの直球を中前に打って先制したが、その後は相手投手を打ち崩すことができなかった。 先発は腰痛から復帰の山田渓太(2年)。1、2回戦は手探りだったが、「この試合からギアを入れた」山田は好投を続けていた。直球に振り遅れてファウルにする相手打者の姿から自身の調子が上がっているのを感じ、カーブを交ぜながら力で押した。 山田の好投に応えたい打線は八回、四球と安打で1死満塁とし、打席には山内伊織(1年)。これまでの配球から真っすぐを読んでいた山内が「山田さんを何とか助けたい」と外角低めの直球をすくい上げると、打球は二塁手をぎりぎり越え、欲しかった追加点をもぎ取り、2―0で九回を迎えた。 山田は九回に1点を失ったが、結果的には14個の三振を奪って完投勝利。山田の完全復活を印象付ける快投に、ナインもスタッフも安堵(あんど)した。 この試合は山田の復調に加え、堅い守りから流れを作る「阪口野球」を体現できたことも大きかった。守りのミスもあったが、1点を争う試合を最少失点で勝ちきったことはチームに勢いをもたらした。 続く準々決勝は昨夏の県王者である県岐阜商に9―3で勝ち、準決勝で市岐阜商に5―2で勝利。決勝は中京に3―4でサヨナラ負けを喫したものの、2年連続の東海大会出場を決めた。 攻撃に関し、新チームが始まってからこだわってきたことがある。「三回までに先発を打ち崩す」ことだ。昨夏の県大会初戦で負けた教訓でもある。打順の一巡目で得点できるようナインは相手投手の球筋や配球、癖の有無を「観察」し、気付いたことを共有する。その成果が県大会で発揮でき、県岐阜商戦では初回に4点を挙げた。 「試合中は『さあ行け』という掛け声だけではダメ。意味のある声を意識している」。準決勝と決勝で本塁打を放った副主将の米津煌太(2年)は手応えを感じていた。=つづく