SNSでアイドルは作れるか ── 共創型コミュニケーションによるアイドル創出の挑戦
一人のカリスマ・プロデューサーによってではなく、ソーシャルの力によってアイドルを作り出せないか? そんな実験的な取り組みがソーシャルアイドル「notall(ノタル)」のプロジェクトだ。2014年4月のオーディションから半年、グループ名や楽曲、ステージ衣装のデザインなどが、一般のユーザーから提供されてきた。この聞きなれない「ソーシャルアイドル」というコンセプト、そしてその狙いは何なのだろうか?
普通の女の子たちが演じる“アイドル”
東京都墨田区の東京スカイツリーにほど近いビルのなかに、インターネット放送局「ワロップ放送局」がある。映像制作スタジオを完備したこの放送局に、月間40組200人近い“アイドル”たちが自分たちを売り込もうと番組に出演する。そして、彼ら彼女らを追いかけるファンたちがその活躍を見守る。 Akibaドラッグ&カフェ、TwinBox AKIHABARAなど、いわゆる「地下アイドル」たちが自分自身をプロデュースする場はこれまでも存在してきた。ワロップ放送局もその一つと言えばそうなのだが、同放送局の仕組みを使えば、だれでも自分たちのパフォーマンス動画を簡単にインターネットに乗せることができるというプラットフォームで、主にインターネット上でアイドルが活躍する場所を提供してきた。 同放送局の頃末(ころすえ)敬社長(48)は「インターネットによって誰でもクリエイターになれる時代において、自分たちの思いを伝えるためにこの放送局を作ったんです」と話す。放送局を経営するなかで、普通の女の子たちが演じる多くの“アイドル”とそのファンらを日々目にしてきた。「アイドルの名前は知られていなくても、彼女たちを育てるファンは何百人もいるんですよ」。 アイドルのファンには2つのタイプがある。一つは、大物になった特定のアイドルを応援するファン、もう一つは、特定のアイドルのファンだけではなく、複数のアイドルを応援するファンだ。後者のタイプを「DD(誰でも大好き)」と呼ぶ。 「ソーシャルアイドル」の仕掛け人の一人が、ほかでもない頃末社長だ。ワロップ放送局は、数多くのアイドルとDDと呼ばれるファン層をつかんできた。ファンのなかには「夢を追いかけている人を応援したくなる」という価値観を持った人も少なくない。ならば、一緒に夢を追いかける仕組みは提供できないか? 歓声を上げて応援することも応援だが、ファン自身が名付け親になる応援や楽曲を提供する応援の仕方もなくはないはずだ。