冬の岩木山で4人死亡・大館鳳鳴高山岳部遭難(1964年) 捜索映像発見 当時知る登山家「事故回顧を」
1964(昭和39)年1月に岩木山で起きた秋田県立大館鳳鳴高校山岳部の遭難事故で、当時の捜索風景や慰霊祭の様子などを撮影した8ミリフィルムが大館郷土博物館(秋田県大館市)で発見された。同市教育委員会の馬庭和也主査は「この事故の映像資料は知る限りでは唯一。現場の雰囲気や空気感は映像でしか伝わらないため、とても貴重で重要」と話している。 事故では、冬の岩木山に生徒だけで登山した同校山岳部6人のうち5人が遭難し、4人が死亡した。8日間の捜索には警察、消防、山岳会メンバーなど延べ2千人以上が参加した。 フィルムは大館山岳会のメンバーだった男性が撮影したと考えられる物で、男性の死後、2020年に親族が寄贈した。映像は約10分の長さで、岩木山神社から捜索隊が続々と出発する様子や、同校の6人が遭難前に焼止(やけどま)りの小屋近くに立てたと思われるテントなどさまざまな捜索風景が約4分流れる。後半6分は慰霊祭や慰霊登山の様子を映している。 当時、弘前高校1年だった登山家・記録作家の根深誠さん(77)=弘前市=は山仲間3人と焼止り小屋近くにいたところ、鳳鳴の生徒から仲間5人が帰ってこないと相談を受け、警察への通報などを手伝ったという。 根深さんは「警察や消防がぞろぞろ登ってきて、ヘリも飛んでいた」と当時を思い出しながら捜索風景の1コマを眺め、「装備も捜索隊のスキルも未発達な時代とは言え、4人も亡くなることはなかった残念な事故だ」と指摘。その上で、「原因や対応について振り返りや反省がなされているのか。フィルムの発見でもう一度、この遭難事故について考える気風が高まってほしい」と話した。