9代目となるフォルクスワーゲン・パサートにジャーナリストの大谷達也が試乗 格上のプレミアム・セダンを喰ってしまいそうな完成度
日本ではヴァリアントのみが販売
VWのDセグメント・モデル、パサートがフルモデルチェンジ。まずは主力モデルのワゴンのヴァリアントに試乗。モータージャーナリストの大谷達也がリポートする。 【写真30枚】モデルチェンジしたフォルクスワーゲン・パサートの詳細画像を見る ◆ティグアンと多くを共有 フランスのニース周辺では、新型ティグアンだけでなく新型パサート・ヴァリアントの国際試乗会も開かれた。ちなみに、2モデルの試乗会を同時開催するのはフォルクスワーゲンにとって異例のこと。では、なぜ同時開催したかといえば、2台は基本技術の多くを共有していることが理由だという。 たとえばプラットフォームはMQBからMQBエヴォに進化した。ホイールベースの延長にも耐えられるメカニカルな強化を実施したほか、電子制御式ダンパーの減衰力を伸び側と縮み側で個別に調整できるダイナミック・シャシー・コントロールの進化形“DCC Pro”を搭載できたのも、MQB エヴォの特徴の1つという。 さらにはエレクトロニクス系のプラットフォームも改良を受けていて、おかげでインフォテイメントが全面改装。最大15インチの大型タッチディスプレイの搭載が可能になったほか、操作系のロジックも一新されて大幅に使いやすくなった。これらの改良は、別項でリポートしたティグアンにもその多くが採用されている。 1.5eTSIガソリンエンジン(最高出力150ps)がミラーサイクル仕様の最新バージョンとなるほか、最高出力193psの2.0TDIディーゼル・エンジンが搭載される見通しなのはパサートもティグアンと同様。ただし、パサートのほうは1.5リッターガソリン・エンジンにプラグインハイブリッド・システムを組み合わせた仕様も日本に導入されるかもしれない。こちらは115psと330Nmを生み出すモーターを搭載。19.7kWhの高電圧バッテリーにより約100kmのEV航続距離(WLTP)を実現するという。 ◆格上のモデルを喰う勢い 今回は1.5eTSIと2.0TDIの2台を主に試乗したが、大まかな印象はティグアンとよく似ていて、新世代フォルクスワーゲンを象徴する軽快なハンドリングと軽く弾むような乗り心地に仕上げられていた。ただし、パサートのほうが上級モデルなためか、ティグアンに比べれば足まわりの動き方がさらに上質で、重厚感を強く意識させる乗り味だった。 しかも、ワインディングロードではコーナーの進入で姿勢が落ち着くのを待つ必要がないのもパサートの特徴。この辺は、ティグアンより全高が160mmほど低いことが貢献しているはずで、SUVにないセダン/ワゴンならではの特徴といえる。 静粛性が優れていることも印象的だった。ティグアンもロードノイズをかなり抑え込んでいたが、パサートの車内はそれに輪を掛けて静か。質感が大幅に向上したインテリアとあわせて、もはや格上のプレミアム・セダンを喰ってしまいそうな完成度である。 キャビンの話題を続ければ、ホイールベースを50mm延長した結果、後席の足下スペースが大きく拡大したことも注目される。このホイールベースの延長がMQBエヴォのハイライトのひとつであることは、冒頭で述べたとおりである。 世界的なSUV人気が続くなか、パサートのような王道の乗用車がフルモデルチェンジされたのは嬉しいが、実はパサートもセダンが不振で、欧州の主要国ではヴァリアントのみが販売される。これもまた時代の移り変わりを痛感させられるところだ。 文=大谷達也 写真=フォルクスワーゲン (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部