香音、“野々村夫妻の長女”からティーンが憧れるモデルへ 俳優としても“ガチ恋”女子大生役で見事なギャップ披露
「推しは推せるうちに推せ」。そんな言葉をここ数年来耳にすることが多いが、対象がアイドルだろうが俳優だろうが、ちいかわだろうが、“推し”を推している人は総じて生き生きしている。ライブや舞台に行く人、映像などの作品を見て楽しむ人、グッズを集める人、チェキ会やミート&グリートなどで交流を楽しむ人、SNSでコメントしたり拡散したりで応援する人…それぞれ応援のスタイルは違うが、仮に“ガチ恋”していたとしても推しに危害を加えないなら好きな気持ち自体に問題はない。しかし、“迷惑系ガチ恋”ファンとなると話が違う。「ただ好きなだけなのに…」と、推しの気持ちなどお構いなしである。そんな推しへの暴走する恋心を描いた衝撃のラブストーリーが、香音と石井杏奈のW主演で2023年に放送された「ガチ恋粘着獣」(テレビ朝日ほか)だ。このほどLeminoでも同ドラマの配信が始まったということで、主演の一人である香音のこれまでのキャリアに迫る。(以下、作品のネタバレを含みます) 【写真】面影バッチリ!ティーンが憧れる美貌の香音、幼少期ショット ■子役として俳優・歌手・モデルとマルチに活躍 2001年4月20日生まれ、東京都出身の香音は、父が野々村真、母は元アイドルの野々村俊恵と両親共に有名人ということで“野々村夫妻の長女”として幼少期から注目を集めた。「コドモ警察」のスピンオフである「コドモ警視」(2013年、TBSほか)や大河ドラマ「花燃ゆ」(2015年、NHK総合ほか)に出演したり、「花粉デビルをやっつけろ!」で歌手デビューしたり、子役としてマルチに活躍した。 並行して2013年には「第1回ニコ☆プチモデルオーディション」でグランプリ受賞し、「ニコ☆プチ」専属モデルに。その後も持ち前の美貌を武器に「nicola」「Popteen」という人気ファッション誌の専属モデルを経験。「Popteen」時代は、仲良しの莉子、古田愛理とそれぞれの名前から1字を取って「アリカ」と呼ばれ、3人で表紙を飾ることもあるなどティーンを中心に絶大な支持を集めた。2021年からは「non-no」の専属モデルを務めており、雑誌のみならず「東京ガールズコレクション」や「GirlsAward」などのイベントにも出演。類い稀な美貌で“ティーンがなりたい顔No.1”に選出されたことも。 モデル業のかたわら、2021年には「高嶺のハナさん」(BSテレ東)に出演。本格的に俳優としてのキャリアも積み始めた。同作はムラタコウジの同名漫画を原作に、エリートOLだが恋愛スキルが小学五年生レベルのハナ(泉里香)の姿を描くラブコメディードラマで、香音は「イチゴ親衛隊」を従える社内のアイドル・天井苺(あまいいちご)役を務めた。 2022年には続編も作られるなど人気を博したドラマだが、香音演じる苺は自分に興味を示さないダメ社員・弱木(小越勇輝)をプライドの高さから振り向かせようとする中でちょっぴり毒舌になったり、だんだん本気で弱木に引かれていき、弱木の憧れるハナに嫉妬したり、感情の揺れ動く姿も丁寧に演じた。 その後、Snow Man・ラウール主演の映画「ハニーレモンソーダ」(2021年)や、本人役でゲスト出演した「何かおかしい」(テレ東ほか)、山本舞香・瀧本美織のW主演ドラマ「Sister」(2022年、日本テレビ系)、「スタンドUPスタート」(2023年、フジテレビ系)などへの出演で俳優としてのキャリアを重ね、2023年4月期ドラマ「ガチ恋粘着獣」で地上波連ドラ初主演を果たした。 ■サイコティック・ラブストーリーでガチ恋JD役 同作は、星来によるコミックス「ガチ恋粘着獣~ネット配信者の彼女になりたくて~」(ゼノンコミックス/コアミックス)を原作に、エキセントリックな恋愛模様を過激かつスリリングに描くサイコティック・ラブストーリー。香音は3人組の人気動画配信グループ「コズミック」のメンバー・スバル(井上想良)のファンである、大学生・輝夜雛姫(かぐやひなき)を演じた。 雛姫はもともと迷惑系ガチ恋ファンだったわけではなく、純粋で真っすぐな「恋心」がいつしか「ガチ恋」に変わり、「好意」が「憎悪」へと変化していった女の子。スバルが裏アカで雛姫にDMを送ってデートに誘い、体の関係を持ったことで勘違いして独占欲が強くなり、いわゆる“同担”にマウントを取られてエスカレート…。推しと“つながろう”としたことや、直接危害を加えようとした点は許されないことだが、恐らくスバルがちょっかいを出さなければずっと普通のファンだったのではないだろうか。 財布と配信画面を見比べて投げ銭を悩む姿や、一人暮らしの部屋で推しグループのYouTubeチャンネル登録者数100万人突破をケーキ&クラッカーで祝う姿など、普通に“推し活”をしている姿はとてもいじらしく、まるで鏡を見ているかのような視聴者も多かったのでは? それ故に、推しとつながって変わっていく姿にはやるせない気持ちにもなった。 もともと原作ファンだったという香音は、雛姫について「狂気的な面もありますが、基本的には純粋にスバルくんを思ういちずで愛のある女の子だと思っています」と分析した上で、「かわいらしい女の子の面と内側に秘めている狂気的な部分、喜怒哀楽をしっかり出していけたらと思っています」と出演にあたっての思いを語っていたが、その言葉通りピュアな女子大生の顔から、スバルからDMがきて半信半疑ながらもときめく姿、実際に推しを前にして緊張する姿、裏切られていることが分かってスバルに敵意を向ける狂気の姿…心情の変化を“いとおしくも恐ろしく”演じてみせた。 同番組のプロデューサーは、当メディアのインタビューで香音について「彼女が感情を昂らせた狂気的な表情も見てみたいなと思ってお願いしました。香音さん自身も推しがいたことはないそうですが、撮影前からスバル役の井上想良さんの写真などを見て気持ちを高めてくれていて。初顔合わせの本読みから涙を流すくらい、雛姫として生きてくれていました」と起用理由を語っていたが、“ティーンがなりたい顔No.1”とも言われる美貌を狂気で歪ませるギャップはなかなかインパクトが大きかった。 この春には大学を卒業し、約13年間所属した事務所も移籍。さらなる飛躍を目指して心機一転、新しい一歩を踏み出した香音の未来はきっと輝けるものになるはず。ただ、もし彼女を推すときは“常識の範囲”でお願いします。 ◆文=森井夏月