『コタツがない家』吉岡秀隆と小林薫の相性抜群“最強コンビ” 北村一輝に訪れた最大の難所
ドラマ『コタツがない家』(日本テレビ系)第3話は、プロ野球日本シリーズの放送延長に伴い、オンエア時間が変更となった。その間、何気なく番組の公式サイトを覗くと、悠作(吉岡秀隆)が「フカボリ悠作」のペンネームで20年前に描いた漫画『パンくずの都』が公開になっているではないか。それは短い読切作品だが、一言で言えば、悠作の人柄が滲み出た、性根が腐った漫画である。 【写真】漫画を描いている悠作(吉岡秀隆) 第3話のタイトルは「ダメ夫 働く」。達男(小林薫)が建築現場のアルバイトを始めた一方で、悠作もまた11年半ぶりに新作を描こうと机に向かっていた。万里江(小池栄子)は悠作が次回作を描く気になったことに大喜び。「今までずっと私小説みたいな話ばっかり描いてきた」というのが、きっと『パンくずの都』のことなのであろう。「いつかはフィクションの世界を描いてみたい」(部屋の本棚には『寄生獣』や『行け!稲中卓球部』などが並んでいる)と思い描いていた悠作の次回作は、誰もが予想だにしていなかった達男との同居話。編集者・土門(北村一輝)のアイデアで、この企画を通すには達男本人の承諾が最大の難所となる。 土門が達男を口説き落とすのに選んだのは、特上のうな重。土門の、そして達男の一番の好物だ。夢中で蒲焼を頬張る達男。土門の説得も功を奏し、達男は上機嫌で漫画化を許可する。しかし、この『コタツがない家』は食事シーンがとびきり多い。『孤独のグルメ』(テレビ東京系)とまでは言わないまでも、公式に“決戦めし”と謳われているほどだ。家族で食卓を囲むと言うが、それほどまでに本作では食事に重きを置いていることが分かる。というのも、小林薫がうな重をかき込む姿は気持ちがいい。あまりの美味しさに思わず笑みがこぼれ落ちてしまっている。撮影では本番前のテストの段階から、小林が何度もうな重を食べていたそう。一見すると羨ましく思えるが、その裏には普段の芝居とは違った苦労があったに違いない。 やっと達男を説得できたかと思えば、今度は悠作が駄々をこねだす。土門と喧嘩をして、達男を題材にした漫画はもう描かないというのだ。達男は自分が漫画になることをベラベラと話すほどに、すっかり気分が良くなっていたところなのに。さすがは土門が認める、圧倒的な社会性のなさと欠落した人間性を持つ悠作と常識人で模範的な生き方をしてきた達男の相性抜群、最強コンビである。 散々お世話になっている恩人の土門に顔向けができないと、万里江はお詫びに編集部を訪ねるが、デビュー作からの腐れ縁とはいえ、土門は人が良すぎる。いや、悠作がダメ夫すぎるため余計そう見えるのかもしれないが、彼は悠作の磨けばダイヤモンドのように輝く才能の可能性を信じている。漫画家として再起させるべく、土門は悠作の好きな差し入れと新たな企画を持って深堀家へ。2人はすぐさま仲直りをして、万里江を安堵させるのだった。 第3話で意外な進展があったのが、順基(作間龍斗)のクラスメイト・れいら(平澤宏々路)が漫画家を目指しているということだ。悠作のことを「フカボリ先生」と呼ぶ、漫画家の卵で、生原稿を持参してきた。得意げに土門に見せておくと言いながら、案の定部屋に忘れっぱなしにする悠作。「順基には見せないでください」という、その漫画の中身は、今後のストーリーのポイントになってくる気がしている。
渡辺彰浩