【パリ五輪】田中希実「幸せを噛み締められた」2度目の五輪 1500m3分台で示した成長と仲間の存在
◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)8日目 パリ五輪・陸上競技8日目のイブニングセッションで女子1500m準決勝が行われ、田中希実(New Balance)は11着で2大会連続の決勝進出はならなかったが、3分59秒70と東京五輪以来3年ぶりの3分台をマークし、来年の東京世界選手権の参加標準記録を突破した。 【動画】日本記録に迫る快走!1500m準決勝をチェック! 「思っていた通り展開は蓋を開けてみないとわからないですが、4分切りのレースになるだろうと思っていました」 東京五輪で一緒に走り、ともに初の4分切りを果たしたライバルでもあり盟友でもあるジェシカ・ハル(豪州)の「背中を勝手に追いかけようと思っていました」。ただ、5000m敗退、さらには1500m予選で接触もあって着で入れなかったが、その後に救済されたことで気持ちが切り替わり、「3分55秒くらいで決勝に行けるんじゃないか」という思いでスタートに立ったという。 今年は特に「3分台」を常に意識してきた。「それが今日、結実したと思うので、悔しさよりは冷静に受け止められています」。それでも、「すごく良い時間だったので、あと3日間(決勝まで)だけでもいいから伸ばしたいと思っていました」と名残惜しさを感じていた。 この3年の間に、田中の中には大きな変化が生まれている。どこか孤独なまま走っていたが、今は違う。「一緒に悔しがっている人がたくさんいる。駆け抜けた先に待ってくれている仲間がいると気づくことができました」。 東京五輪は「本当に楽しくて、自分の限界に向かっていく、飛ぶように走っていた」。今回は、「一歩、一歩、踏みしめるように走っていました」。スタートラインに立った時に、一緒に並ぶライバルたちもまた、同じようにいろいろな思いで立っている。「オリンピックだからこそ、それをひしひしと感じました」。同じ3分台でも、ある意味で重く、そして違った価値のあるものとなった。 田中の2度目のオリンピックが終わった。目指していた2種目ファイナルには届かず。「オレゴン、ブダペストの世界選手権も苦しくて、どうしてこんな思いをしなければという思いがありました」。今回も苦しい時間があったが、「なんかうれしい」大会だった。それは「一緒に苦しんでくれる仲間」がいたから。 「たくさんの人が一緒にいてくれるからこそ味わえる苦しみだった。本当に幸せを噛み締める大会でした。今回のテーマは幸せを噛み締めたいということ。それは完遂できました」 最後はふっと笑顔がこぼれた。まだ4年後のことは考えられない。幼いころからそうだったように。目の前のレースにどう立ち向かうか。昨日の自分よりどうやって強く、速くなれるか。それを支えてくれる仲間がいる。だから田中は、また明日から走り出せる。
月陸編集部