日本は「東京圏」と「地方」の2つの国を抱えているという「意外と気づかない現実」
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の大きな違い 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。 ※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
スマートな暮らしを実現できる場に
2042年を「当面のゴール」と考えるにしても、準備期間も必要だから、かなり急いで事に当たらなければ間に合わない。われわれがかなり細い綱を向こう岸まで渡りきるためには、いくつかのステップを踏む必要もある。また、東京圏と「地方」というまるで課題の異なる2つの国を抱えるような状況の中で、いくつもの方向性の違う施策を同時進行で展開するという難作業にも挑まなければならない。 2042年までの道のりは令和時代を生きる「大人たち」が歩む道と重なる。そうした意味では、ここで私が示す内容は令和時代の道標になることだろう。
拠点という「王国」を作る
第1の視点は、既存自治体とは異なる拠点を各地に作ることだ。こうした拠点は住民の自立性が高いエリアとするため、本書では敢えて「王国」と呼ぶことにする。 拙著『未来の年表』では「非居住エリアを明確化」という処方箋を示したが、面的広がりによる発展モデルが終わった人口減少日本では発想を大きく転換し、居住可能なエリアを「王国」として整備することである。 これまでの政府の地方創生のアプローチは、「仕事を作れば人は動く」というものであった。これを循環させることで地域経済を、そして既存自治体を活性化させることを目指した。本社機能の地方移転促進も、東京23区内の大学入学定員増加抑制も、政令指定都市などの機能強化もその一環であった。 これをすべて間違いと批判するつもりはない。しかし、いずれも人口が大きく減り始める前に取り組み始めておくべきだった。実行に移すには、遅すぎたのである。 しかも、既存自治体を前提に発想したものである限り、なかなかうまく機能しない。既存自治体の多くは人口減少時代の地域コミュニティの“受け皿”としてはサイズが大きすぎる。そのすべてを維持し続けることは難しい。多くは既得権によってがんじがらめになっており、社会の激変についていくような変革を決断するのに時間がかかりすぎる。 既存自治体を前提とした政府の政策の成果が上がってくるのを待っているうちに人口が減り尽くしてしまう、“切羽詰まった地域”は少なくない。 既存自治体のエリア全部を発展させていくことは困難だ。現状維持すら簡単ではない。行政サービスや電気、水道、医療を届けるのに多大なコストを要するところも出てくる。ならば、少しでも暮らし続けられるエリアを増やす方策を考えるほうが現実的であろう。 私が提唱する「王国」は、政府が推進しようとしているコンパクトシティとは異なる考え方だ。コンパクトシティといえば、駅前や中心商店街といった市街地への人口集積を考える人が少なくない。結局は既存自治体のすべてのエリアを前提とし、それを段階的に縮小させていく発想である。