定員あふれる通信制高校、志願者が急増 不登校の子どもたちの選択肢に 心のケアや多彩な教育、生徒ひきつける
不登校の増加などに伴い、通信制高校で学ぶ生徒が広島県東部でも増えている。進学の選択肢として広く捉えられるようになったこともあり、心のケアなど充実したサポート体制や工夫を凝らした教育が生徒たちを引きつける。志願者の急増に対応しきれず、入学を断るケースも出ている。 【グラフ】広島県内に本部を置く通信制高校の生徒数の推移
生徒が2・8倍に
東林館高(福山市光南町)では、設立当初の2001年3月に175人だった生徒が、今年5月時点で492人と2・8倍になった。特に新型コロナウイルス禍前の19年から約190人増え、池田忠輝校長は「コロナ禍以降『無理して学校に行かなくてもいい』という意識が浸透し、教育環境が変わってきた」と分析する。 同校は生徒との週1回の面談に加え、家族の相談を随時受け付けるなどサポートに力を入れ、発達障害の専門家とも連携する。子の不登校に悩む保護者たちの間で口コミが広がり、新入生や転入生が増加。例年は12月ごろに受け入れの上限に達していたが、今年は4月でいっぱいになり、以降は断っているコースもある。 「職員一同、何とか力になりたい。相談だけでも受け付ける」と池田校長。来年度は教室を増設し、正規職員も増員して受け入れ枠を拡大する予定でいる。
卒業生の約7割進学
通信制高は全国的に生徒数が増え、県全体でも同様の傾向だ。県教委のまとめでは、県内に本部を置く学校の生徒は5月時点で3891人。昨年比で約500人増え、15年以降の10年で最多となっている。 並木学院福山高(同市吉津町)も生徒数が年々増えており、現在は約360人を抱える。通信制を選択した理由をアンケートしたところ、約8割が「中学校や全日制高校で不登校を経験した」と答えたという。 長尾恵教頭は「教室の座席指定がなく、授業は大学の講義のような雰囲気。少人数のクラスもあり、集団の授業や人間関係に不安を抱える生徒にとって安心して学べる環境」と特長を語る。多くの生徒が週2日以上のスクーリング(面接指導)を受講し、卒業生の約7割が進学するという。