「最期は自宅で…」超高齢化社会が直面する2025年問題
人生の最期をどこで迎えたいか。約6割の人が住み慣れた自宅を希望しているという調査結果があります(日本財団調べ)。一方で、命を支える現場では、深刻な問題に直面しています。
「病院ではなく家がいい」
「今104歳でしょ。あと6年ぐらいは生きると思うけど。みなさんに協力してもらうけん、安心しています」
そう話すのは、熊本県御船町に暮らす寺崎スワさん。1919年生まれの104歳です。毎日、元気に過ごしていますが、2年前、感染症で寝たきりの状態になり、命の危機に直面しました。 当時、病院に入院して治療を受けていましたが、スワさんの強い希望で退院し、自宅に戻りました。「病院からは、入院以外にはないって言われたけど、母が帰りますって言うんです」と振り返る次女の孝子さん。さらに「病院だと、母の様子がわからず心配だった」とも話します。
スワさんが選んだのは、在宅医療。通院が困難な場合や、自宅での医療を希望する場合に医師や看護師などが訪問して医療を提供しています。訪問看護師の江藤聡美さんは「病気のケアや利用者さんを支えている家族、利用者さんのお気持ち、全部ひっくるめて支えていけるような存在でいたい」と語ります。
訪問看護ステーション 10年間で2倍に
在宅医療の増加に伴い、全国的に増えているのが「訪問看護ステーション」です。熊本県内でも、この10年で事業所の数は2倍に増加しています。 訪問看護ステーションCurutoの那須正剛代表によると「住み慣れた地域で過ごしたい。病院ではなく、自宅で最期を迎えたい」という声が多いといいます。さらに、コロナ禍では入院中の面会ができなかったことも、在宅医療のニーズが高まった背景にあります。Curutoでは、年間50人以上の看取りをしているそうです。
「5人に1人が75歳以上」迫る2025年問題
一方で、命を支える現場には、深刻な問題が迫っています。いわゆる「2025年問題」です。 2025年には「団塊の世代」が75歳以上になり、日本の人口の2割、5人に1人が後期高齢者になるとの統計があります。これに伴い、不足する看護師の数は、約6万人から27万人と推計されているのです。国などが看護師の処遇改善など担い手確保を進めていますが、那須さんは、「2042年まで高齢者が増え続けるが、担い手で何十万人と不足していて、追いつく見込みも立っていない」と指摘します。 「最期は希望する場所で」 本人や家族の願いを実現できる社会であり続けるためにには、現場が抱える課題への対応が求められています。