最盛期は100万部→今は10万部に激減した週刊誌の記者が、後輩のマンガ編集者にかけられた「心ない言葉」
■それでも紙ファーストを続ける そして小倉氏はもう1点、指摘する。「出版社で今出世している幹部はほぼ紙の編集部しか経験しておらず、デジタルのことが正直よくわかっていないのです。だからこそ、紙からデジタルにシフトすることにいつまでも拒否感を覚えています。それが紙はジリ貧状態が続いていても、『デジタルは若手任せ』という状況を引き起こしていると考えます」 週刊誌編集長とウェブ編集長は社内的にどっちが偉いかというと、基本的には週刊誌編集長の方が偉い。たとえ、利益的にはオンラインの方が「上」でもだ。紙の方が偉いのは現場レベルでも一緒だ。基本的に有望な社員の配置は紙ファーストだ。 たしかに、オンライン記事の主な供給源の1つが紙雑誌であり、そこに関してはオンライン編集部として頭が上がらない側面はあるだろう。しかし紙で売れる記事とオンラインで読まれる記事は根本的に違う。量を確保するという意味では重要だが、結局オンライン編集部は人材を外部から採用したり、先述の通り行き場を失ったような社員が来たりする。 ■「いい迷惑です」 また有名雑誌の書店営業担当は「定期的に発行され、ある程度売上目処が立つことはデカイ」とも解説する。 「売れ行きが読めない不定期刊行の書籍に比べて、たとえ今のような大きく売れない市況であっても雑誌にはキャッシュフロー上利点があります。出版の再販制度の関係で、実売が確定する前にドカンとキャッシュが入る。実売が確定した後計算されるが、それでもそれが毎週繰り返されるため、フロー上は手元にキャッシュがあるのです。それを使って新しいビジネスだって考えられなくもない」 一方でこうも言及する。「経営陣からはいつまでも、週刊誌は『明るく元気で愉快な子』でいてほしいという淡い期待を感じます。出版社の幹部は週刊誌出身がどこも多いです。だからこそ、思い入れも強い。モーレツ社員時代の辛い記憶がほとんどかもしれませんが、それもいつしかセピア色に染まるのでしょう。ある意味サバイバーバイアスで『この苦難を君たちにも乗り越えてほしい』ということなのかもしれません。いい迷惑です」 紙をやめられない事情は複雑なのだ。 ---------- 鈴木 聖也(すずき・せいや) 『MINKABU』編集長 1988年前橋市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、共同通信社で記者、プレジデント社で編集者・デスクなどを経て2022年から『MINKABU』編集長。2019年、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞デジタル賞受賞。 ----------
『MINKABU』編集長 鈴木 聖也