全人代で中国首相の記者会見を実施しないのは「時代の逆行」
東大先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が3月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3月5日に開幕する中国の全人代について解説した。
中国の全人代、恒例の首相会見は実施せず
中国の全国人民代表大会(全人代)の報道官は3月4日、李強首相が5日に開幕する全人代で記者会見を行う予定はないと明らかにした。全人代の閉幕後に首相が記者会見を行うことが長年の恒例となっていたが、首相会見に代わって閣僚の記者会見などを増やすと説明した。 飯田)報道によると、1991年から首相会見を行っていましたが、特別な事情がない限り来年(2025年)以降も実施しないということです。やはり権力構造の変化があったのでしょうか? 小泉)冷戦が終わる前後から、社会主義の国もさすがに「最低限は国民とのコミュニケーションをとろう」という傾向があったと思います。冷戦時代の共産圏の人たちは、基本的に紙しか読まなかったのです。記者会見でも自由な応答はしません。しかしこの30年間ほどで、記者に問われたらアドリブで答えるような、ある程度人間らしい顔をするようになってきた。それがなくなってしまうのは時代の逆行ですよね。ただ、その他の閣僚には答えさせると言っているので、国民や世界との対話を閉ざすわけではないと思いますが、実態はどうなっていくのか……。 飯田)今後。 小泉)もう1つ、プーチン大統領などは人前に出て、何時間でも延々と話すのです。だから、単に表へ出て話せばいいというものでもない。「公正な情報空間のなかでなされているかどうか」が、もう1つの問題です。
ロシアに対して「好意的中立」という立場を続ける中国
飯田)今回の全人代は、「全国政治協商会議」と合わせて「両会(2つの会議)」と言われています。経済をどうするかという話と、王毅氏がずっと外相との兼務を続けていますので、後任がどうなるのかも注目されています。露中関係も変わってきていますか? 小泉)「この状況にしては変わっていない」と言うべきでしょうね。ロシアが2年も侵略戦争をしているなかで、中国はロシアとの関係を切ろうとはしていません。他方、武器を送るわけでもなく、ペイしないと思えば、ロシアからの新しいパイプラインも引きません。「好意的中立」のような立場を保ち続けている感じがします。