「仕事は一度カタチにしてから、その後に乗せる熱量次第でクオリティが上がる」漫画家 になる夢を叶えた 中丸雄一の覚悟
――芸能の仕事は非常に不規則で時間を確保することが難しかったり、突発的な仕事が入って予定が狂うこともあると思います。連載を続けるために、時間のやりくりに関してはどんな工夫をしていましたか? 中丸 「それはもう、とにかく“早め早めに”進めることにしています。だから今のところ、他の仕事と両立できなくて原稿のクオリティに納得していない、という状態で提出してしまったことはないですね。たまに睡眠時間を削って作業をすることもありますが、何日も徹夜をして無理矢理間に合わせているわけでもないんです」 ――中丸さんは昔から前倒しでモノゴトを進められるタイプだったんですか? 中丸 「前倒しで終わらせる癖がついたのは、仕事を初めてからだと思います。振り返ると、学生時代の夏休みの宿題は計画的にやれるタイプじゃなかったですね。だって宿題って、テキトーにやってしまっても先生や親に怒られるくらいで、人生が終わるわけじゃないですか(笑)。でも、仕事はそういうわけにはいかないから。自分がやるべきことをやらないと周囲の人にも迷惑をかけてしまうし、その相手から二度と仕事をもらえない可能性もありますからね」 ――すごいですね。世の中には締め切りギリギリにならないと仕事に身が入らない人も少なくないと思いますよ。 中丸 「だって、ギリギリにやるメリットってあんまりなくないですか? これは僕の持論ですけど、仕事は一度カタチにしてから、その後に追加で乗せる熱量次第でクオリティが上がると思うんですよ。僕は『中丸君の楽しい時間』という一人舞台のセルフプロデュースをすることがあったり、KAT-TUNでもメンバーと一緒にライブを作ることがありますが、どの仕事でも『こんな感じかな』と全体像が見えてから、悩んで、粘って、ブラッシュアップすると全体の完成度がだいぶ上がるんですよ。 そうだと信じているから、 漫画もできる限り早く終わらせて、そこから改めて細部にこだわっていきたいんですよね。実際に、一度提出した後に自主的に加筆や修正を加えたこともあります」 ――モノづくりに対する中丸さんのプロ意識の高さが分かるお話ですね。 中丸 「いやいや、僕が余裕を持てるようなスケジュールを組んでくれる編集部さんのおかげです。他のタレント活動も加味して無理のない締め切りを設定してもらっているので、そこは本当にめちゃくちゃ助けてもらっています」 ――漫画を描く際に集中力を上げるコツや、気合いを入れたい瞬間に使う相棒はありますか? 中丸 「『これながないと描けない!』みたいな必需品は特にないんですよね。僕の場合は、生活リズムに組み込んでしまえば、それをやることが苦じゃなくなってくるんですよ。漫画の場合は、なるべく朝早く起きて、寝起きに描く。それが身体に染み付いているので、起きたら身体が勝手に机に向かっているし、気合いを入れる必要もないんです」 ――ルーティン化させることが上手いのはいつ頃からだったんですか? 中丸 「僕は仕事と両立しやすい通信科の大学を選んだのですが、最初の1年はリズムがなかなかつかめなくて、その影響で卒業するまでに5年かかってしまったのです。でも1年目の反省を生かしてその後の4年間は何が何でも午前中に授業を受けることを自分に課したんですよね。 最初は大変でしたが、それを自分の中で当たり前にすることができたから卒業できたので、そのやり方を漫画でも実践しているんです。朝起きたら、脳が抵抗する前に身体を机に向けてしまう。シンプルだけど、そのやり方が僕には合っています」 ――漫画以外にも、ボイスパーカッションや動画編集など、中丸さんはスキルアップに時間がかかる特技を次々と習得してきた印象です。一念発起して新しいことを始めても三日坊主で終わってしまいがちな人にアドバイスをください! 中丸 「幸か不幸か、僕は精神的に自分を追い込みやすい環境にいるんですよね。芸能界にいると、極端な話ですが、何らかの秀でた芸がないと生きていけません。芸を磨かないと死んでしまうわけです。三日坊主で終わってしまう人と比べたら、もしかしたら根本的な動機に違いがあるのかな。 そして、繰り返しになっちゃいますけど、ボイパに関しても僕の生活の一部になっているんですよね。今でも最近ネットで流行っている音や上手い人の動画をチェックすることが当たり前になっているので。だから、まずは1日10分でもいいから、生活リズムに組み込むことを目指すことをオススメしたいですね」 ――漫画に関しては本格的に目指してから約7年かけてデビューの夢をつかんだそうですが、文字通り“必死”に努力を積み重ねてきたんですね。 中丸 「挫けそうになった日もありますけど、執念ですよね。挫けそうになるくらい大変な目標なら、挫けないで努力すれば勝てるじゃないですか。刺激の強い言葉になってしまうけど、『やらなければ死ぬぞ』と自分を奮い立たせてきましたし、そういう覚悟は持ち続けてきました。 暑苦しい話になっちゃいましたけど、『山田君のざわめく時間』はめちゃくちゃユルい漫画です(笑)。あまり身構えずに楽しんでいただけたら嬉しいですね」 撮影中、今回撮影を担当した蓮井元彦さんと時折言葉を交わし、同年代だと知ると「ああ、なんかそんな感じがしました!」と笑顔を見せていた中丸さん。 次回インタビュー後編では、フィルムカメラで撮影した写真とともにお届けします。関連記事<今後は「恋愛モノ」へのチャレンジも視野に⁈ 漫画家・中丸雄一としての野望とは?>にて公開中です。
<プロフィール> 1983年生まれ。2001年にKAT-TUN結成、2006年にCDデビュー。音楽活動、お芝居などに加えバラエティ番組でも活躍。日本テレビ系列「シューイチ」、テレビ朝日「家事ヤロウ!!!」、ABCテレビ系列「朝だ!生です旅サラダ」などに出演中。グループ活動の傍ら、二宮和也さん、山田涼介さん、菊池風磨さんと共にYouTubeチャンネルを運営。同チャンネルでは、動画編集を担当している。