『葬送のフリーレン』アニメ化大成功の要因は? 予想を超えてきたアニオリ演出
アニオリ演出でフリーレンとフェルンの関係性がより立体的に
作画ばかりではなく、作曲家・Evan Callによる壮大な劇伴などもアニメならではの魅力だったが、なにより忘れてはならないのは“アニオリ演出”の存在だろう。 セリフの一言一句に至るまで原作を忠実に再現したと言われるアニメ『葬送のフリーレン』だが、実は細かく見るとさまざまなシーンが追加されている。そもそも第15話のダンスシーンも、原作ではわずか数コマしかなかった描写にたっぷり肉付けしたものだ。 2クール目でいえば、第24話にて大きな脚色があった。二次試験中、迷宮を探索していたフリーレンたちが隠された小部屋を見つけるというアニオリエピソードが追加されていたのだ。小部屋には統一王朝期の壁画が眠っており、フェルンが目を輝かせるのだが、それを見てお宝目当てだったはずのフリーレンもご満悦になる……という秀逸な展開だった。 また第27話では、リヒターの店の前を偶然通りかかったフェルンが、「“フリーレンの弟子か?」”と尋ねられるシーンが追加されていた。フリーレンと喧嘩中だったフェルンは、思わず言いよどんでしまうのだが、そこでリヒターはフェルンの杖を修理するよう依頼を受けていたことを明かし、「大事にしろよ」と声をかける。これは杖とフリーレンの両方にかかったダブルミーニングのセリフだろう。 さらに一連のシーンは、後にゼーリエに勧誘されたフェルンが「私はフリーレン様の弟子です」と断言する場面との対比にもなっていた。この演出によって、フェルンとフリーレンの関係性がより一層深掘りされており、あまりに絶妙な原作からの脚色だと言える。 原作ファンが思わず唸るほどのクオリティで、2クールを駆け抜けたアニメ『葬送のフリーレン』。名シーンの数々を振り返りつつ、今後続編が制作される日がやってくることを期待して待ちたい。
キットゥン希美