体罰や暴言による「指導死」なくせるか、悩み命絶った熊本の中学1年生 「現場の意識改革を」、再発防止を願う各地の遺族
教職員の不適切な指導で子どもが死に追い詰められる「指導死」が、各地で問題となっている。2019年4月、熊本市立中に通っていた1年生佐藤優太さん=仮名=は自ら命を絶った。市が設置した第三者委員会は、小学6年生の時に担任だった教諭による不適切な指導が影響を及ぼした可能性を指摘。市教育委員会の調査では、他の生徒に対する暴言や体罰を含め、不適切行為は40件以上に上ると判明した。国も不適切な指導の対策に乗り出す中、遺族らは「現場の意識改革を」と訴える。(共同通信=小松陸雄、小玉明依、窪田湧亮) ▽円形脱毛症に睡眠不良も 「冗談を言って、周りと一緒に笑う子だった」。記者が昨年11月、優太さんの自宅を訪れると、母親は小学5年時の通信簿を見て涙を流した。当時の担任は通信簿に「友達が困っていたらすぐに気づいてくれた」とコメントを記載。優太さんは将来、医療機器をつくるなどして「人の役に立ちたい」と話していたという。
学校の様子を楽しそうに話していた優太さんの様子が変わったのは、6年生になってからだ。口数が減り、夏には円形脱毛症になっていた。卒業を直前に控えた頃には、トイレやシャワーを浴びる時間が異常に長くなり、夜中にも頻繁に起きるようになっていたという。 2019年4月18日夜、優太さんは亡くなった。直後に「死」と書き込んだノートが見つかり、学校が書き込みを把握しながら、保護者に伝えていなかったことも明らかになった。 遺族の要望を受けて、熊本市は自殺の背景を調べる第三者委を設置。委員会は2020年11月から調査を始め、53回の議論を経て、2022年10月に報告書を公表した。 報告書では、優太さんが小6時に抑うつ状態に陥っていた可能性が高く、それが徐々に悪化したのが自殺の一因だと指摘。その上で、「元教諭の不適切な指導が、発症や増悪に強く影響した蓋然性が高い」と結論づけた。 ▽「バカ」は日常、管理職指導も効果無く