捨てるしかなかった受粉用リンゴ、クラフトビールに 特許技術の抽出液で新開発
クラフトビール大手のコエドブルワリー(埼玉県川越市)が、信州大(本部・松本市)などの特許技術を使って上水内郡飯綱町産のリンゴから抽出した糖蜜を生かし、新たなビールを開発した。リンゴは受粉用品種の「メイポール」で、花粉採取に使うものの果実は廃棄されてきた。資源を有効活用し、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できる商品として来年1月に売り出す。 【写真】ビールに使われる「メイポール」
信大の特許技術は「酵素処理技術」と呼ばれ、工学部長の天野良彦教授(生物化学)らが研究。酵素を使うことで植物に含まれる天然色素の抽出効率を高められる。信大はリンゴから抽出した色素を使った赤いジャムも製造。魅力ある新商品を模索するコエドブルワリーが2年ほど前にこの技術を知り、「これは使えると率直に思った」(朝霧重治社長)と着目した。
新たなビールは「COEDO 香琳―Kourin―」で、リンゴの香りや酸味が特徴。ポリフェノールを多く含む。信大と連携する飯綱町の農産物加工施設からメイポールの色素を含む抽出液の供給を受けて、12月から生産を始める。来年1月から埼玉県を中心とする関東地方や長野県内のスーパー、百貨店などで販売する。希望小売価格は333ミリリットル入りで税別398円。
コエドブルワリーは1970年代から有機農業に取り組む協同商事(川越市)が立ち上げたブルワリー。96年からビール製造を手がけ、ヤッホーブルーイング(北佐久郡軽井沢町)などと並ぶ「第一世代」のクラフトビールメーカーだ。これまでも規格外の農産物をビール造りに活用。朝霧社長は今回の新商品について、輸出も視野に入れているとし「日本のSDGsの取り組みを世界に発信したい」とした。
信大の特許技術は他の果実や野菜などでも応用が可能。天野教授は「この技術を使ってもらい、捨てられるものが活用できたらうれしい」としている。