二重被災越え、希望のネオン 11月、輪島・河井町にスナック
●「疲れた市民に憩いを」 奥能登豪雨の発生から21日で1カ月。二度の大災害でにぎわいを失った輪島市中心部に、新たなネオンがともることになった。同市河井町のスナック「ルピナス」。移転オープンを3カ月後に控えた元日に地震で新店舗が壊れ、修理が終わろうかというタイミングで水害が発生。2度の延期を余儀なくされたが、11月に営業を開始できる見通しとなった。ママの上濱睦子さん(53)は「二重被災で疲れ切った市民に憩いの場をつくる」と誓い、新装開店へ準備を進める。 【写真】開業を控えた「ルピナス」の外観 上濱さんは輪島市海士町(あままち)で生まれ育ち、約15年前まで金沢市片町のラウンジなどで働いた。その後独立して輪島に戻り、町野町にスナックを出店。同所で2年半ほど営業した後、同市河井町の飲食店街「観音町」にあるビルに入居した。 ママの気さくな人柄もあり、漁師や付近にある観光施設職員らで店はにぎわうようになった。営業が軌道にのったため、近隣の空き店舗を改装して移転開業しようと決めた。 ●避難先から準備 しかし、今年3月のオープンを目指していたところで元日に地震が発生し、新店舗が損壊した。「やっと自分の店を持てると思ったのに。本当に悔しかった」。上濱さんはこう振り返る。 家屋などの復旧工事が優先される中、店を修理してくれる業者が確保できたのは7月ごろだった。上濱さんは避難先の金沢市内から輪島へ通いながら出店準備を進めていたが、今度は大雨が輪島を襲った。新店舗に大きな被害はなかったものの、周辺で浸水被害や土砂崩れが多発した。 ●常連の言葉で決心 「こんな時にスナックを再開して、周りから怒られんかな」。上濱さんが開店を見合わせようかと迷っていた時、休業中の店に顔を出した常連客がこう言った。「いつから始めるんや」「息抜きの場がないとさびしいわ」 もともと、「地元の人たちが『明日もまた頑張ろう』と思える場所にしたい」と店を切り盛りしてきた上濱さんは、この言葉に背中を押された。心身の疲れを癒やせる空間が被災地にこそ必要だと思い直した。 新店舗はカウンターとテーブルの約20席があり、カラオケも備える。上濱さんは「店で心安らぐ時間を提供し、少しでも輪島復興に役立ちたい」と話した。