英国で人気の自動車部品フリマが「濃厚すぎた」件 マニアも驚く「オートジャンブル」に潜入
年代物のヴィンテージも数多く出品
別のブースでは、ノーマン・ダンフォードさんがピントの排気管2本とクロスフロー(エンジン)の排気管1本、さらにエスコートRS2000のキャブレターとインテークマニホールドを展示している。 また、カプリやエスコート用に再生されたシルやガスケット、シール、ワイパーブレード、スパークプラグ、ライト、計器類もあった。 スティーブ・クルーさんは甥っ子と一緒に、赤いモンデオ(第2世代)のテールライトを並べて人目を引いている。 ビニールシートの上にはフィエスタやフォーカス、ホンダ・シビック(第8世代)、ジャガーXJ8、2006年型アウディA4の部品も並ぶ。モンデオのフェンダーライナーのコレクションはきっと売れにくいだろう。彼も同意する。「今日が終わったら、ゴミ箱行きだよ」 クルーさんの本職は自動車解体業で、そこで回収した部品をeBayやFacebook、ヘインズのオートジャンブルなどのイベントで販売している。「適切なクルマを買い、ゆっくり解体して部品を売れば、購入費の5倍は儲かる。僕の人生のすべてだよ」 新しいモデルだけでなく、古いものにもまだチャンスがある。スチュアート・シンクレアさんは、MG TFのフェンダーとオースチン・ケンブリッジのサイドバルブエンジンに大きな期待を寄せている。90歳のジョン・メイソン=ウェンさんは、友人の運転で160km離れたロス・オン・ワイから、マグネトー(点火用の磁石発電機)、キャブレター、ビンテージのヘッドライトなど、さまざまな宝物を積んでやってきた。そのすぐ近くには、箱に入ったままのフォード・ポピュラー(1950年代の大衆車)用のクロームドアハンドルが誇らしげに並んだブースもある。 このような部品がたくさんあり、その多くは英国自動車産業の栄光の時代に作られたものである。 ティム・ホワイトさんは、そんな時代を少し懐かしんでいる。彼はフロムにある自分の会社で、以前勤めていた会社が廃業したときに取っておいた設備を使って、交換用のパネル、シャシー、サスペンション、フロアパン、サブフレームを製造・販売している。 その数軒先には、今日も調子がいいと語るアンドリュー・ウェルシュさんがいる。彼は1970年代から1990年代の自動車部品を専門に扱っており、その需要は高まっているという。 彼はヘインズに山ほどの品物を持ってきた。特に目を引くのは、未使用のモーリス・マリーナのリアバンパー2個、マエストロのフロントフェンダー、初代フォード・エスコートのヘッドライトなどだ。終了時間までに、150ポンド(約2万8000円)は稼げると見積もっている。 一方、来場者はブースをまわり、品定めや値切り交渉をしている。何人かの笑顔は、夢が実現したことを物語っている。 ピーター・シモンズさんは自宅にMGBロードスターを所有しているが、この日はベーラー(干し草を束ねる農機具。彼はパートタイムで農業を営んでいる)用のミニ・ピックアップのライトレンズ数個と工具、そしてなぜか馬の蹄鉄を打つ台を買った。「馬の蹄を乗せるんだ」と彼は説明する。 オートジャンブルで期待していたものとは違ったが、オープンマインドで行けば、驚くようなものが手に入るだろう。筆者は古いトライアンのサーカス・トラック(おもちゃ)を30ポンド(約5700円)で買ってしまった。
ジョン・エバンス(執筆) 林汰久也(翻訳)