高卒4年目・中森俊介(ロッテ)がついに台頭!明石商時代に見えた“野心家”の一面【主筆・河嶋宗一コラム『グラカン』vol.11】
投手としては申し分ない実力があるものの、1点気になったのは…
春夏の甲子園で中森投手の投球を見ていて、非常に器用な投手に見えましたが、気になったのは投手としてしなやかさがあまりなく、動きが硬いと感じました。柔軟性を高めていかないと故障のリスクが高まるのかなと見ていました。 その疑問をまず狭間監督にぶつけたところ次のような回答が返ってきました。 「正直いうと、中森は投手としてはあまり好みではありません。肩甲骨の周りもそうですが、体重移動するうえで重要な足首も硬い。柔軟性を欠くということは故障のリスクが高まるからです」 それでも故障を防いだのはフォームの指導がありました。 「無理なく腕が振れる範囲があるので、バックスイングはその位置にさせています。柔軟性がないのに、必要以上にバックスイングをしてしまうと、肩が入りすぎて負担をかけてしまうので、故障のリスクが高まりやすい。 ただ投手として本能的に引きたくなってしまう。そうなると抑えが効かず、高めに浮いてしまう。打たれるパターンはそういうケースなんです」 中森投手も柔軟性がないことを深く自覚し、可動域を広げるトレーニングを欠かさず行い、風呂上りに柔軟体操を行うようになったようです。また当時の取材ではキャッチボールの前に、チューブトレーニングでインナーマッスルを鍛え、そして投球練習を終えた後もしっかりとダウンを行った後、チューブトレーニングを行う姿がありました。
課題克服に向かって取り組む中森投手の姿を見て、センバツが楽しみだと思いましたが、新型コロナウイルスの影響で大会が中止になります。中森投手は8月に交流戦という形で4度目の甲子園のマウンドを踏み、桐生第一相手に2失点完投勝利を収め、高校最後のマウンドを終えました。最速150キロをマークし、切れ味鋭いフォーク、スライダーを投げ込む投球はさすがでした。 迎えたドラフトではロッテから2位指名を受け、高卒プロの目標を叶えることができました。高校では4度の甲子園出場。そしてドラフト上位指名。コロナ禍があってもほぼ目標を達成。まさに有言実行の男でした。 ロッテでの1年目は体作りに専念し、一軍、二軍ともに登板なし。中森投手の投球は他の投手よりも完成度が抜けていたので、1年目から登板していれば、二軍でもそれなりの実績を残していたと思います。ロッテも狭間監督と同じく、柔軟性がないことや、フィジカルの低さを感じていたのでしょう。将来、一軍で活躍することを見据えて、大きく育てる方針が感じられました。 入団3年目の昨年に一軍デビューを果たし、13試合に登板し、2先発。3勝2敗、防御率3.54と順調に結果を残しています。 プロの実績としては高卒2年目からローテーション投手として活躍する高橋投手、昨年、ブレイクを果たした山下投手に遅れをとっていますが、オープン戦の投球を見る限り、十分に追いつける速球の強さ、変化球の精度の高さはあります。 昨年までの下積みの期間をしっかりと活かし、大ブレイクを果たすことを期待しています。 *『主筆・河嶋宗一コラム グラカン!』は毎週日曜配信します。