松下幸之助が説いた「有能なのに会社で大成できない人」の一つの特徴
人生100年時代を生きるビジネスパーソンは、ロールモデルのない働き方や生き方を求められ、様々な悩みや不安を抱えている。 【写真】整列する社員に声を掛ける松下幸之助 本記事では、激動の時代を生き抜くヒントとして、松下幸之助の言葉から、その思考に迫る。グローバル企業パナソニックを一代で築き上げた敏腕経営者の生き方、考え方とは? 【松下幸之助(まつしたこうのすけ)】 1894年生まれ。9歳で商売の世界に入り、苦労を重ね、パナソニック(旧松下電器産業)グループを創業する。1946年、PHP研究所を創設。89年、94歳で没。 ※本稿は、『THE21』2023年3月号に掲載された「松下幸之助の順境よし、逆境さらによし~賢い人間は国を興し会社を興す。同じように、賢い人間が国をつぶし会社をつぶす。」を一部編集したものです。
会社をつぶすのは経営者 紙一枚の差とは
「賢い人間は国を興し会社を興す。同じように、賢い人間が国をつぶし会社をつぶす。」 怖い言葉である。この名言は1976年、松下幸之助が81歳の相談役時代、名古屋青年会議所の招きを受けて登壇し、名講演となった一節の中で出てきた。 若い経営者たちが目を輝かせて己を見つめる先で、幸之助はわが経営の60年史を語った。 話が後半に入ったとき、幸之助は突然、相撲の話を始めた。 「きのう相撲を見ていましたら、負けるべき人が負けずして勝ち、そして勝つべき人が負けるというような場面も出てきました」 その多くの理由は油断だと片づけながら、急に商売の話に戻し、経営者に関しては、60年の経験から言えば、経営者その人自身がつぶしている、と幸之助は言い切った。 「ですから、賢い人は、会社を興し、国を興します。しかしまた同時に、会社をつぶし国をつぶすと、こういうことです。(中略)面白いものやと思いますな。国をつぶす賢い人と国を興す賢い人と、どれだけの差があるかというと、紙一枚の差です。紙一枚も差がないくらいです」 観衆は思わず息を呑んだ。