「プロ野球90年」ティモンディ・高岸宏行さんが振り返るプロ選手を目指した日々 「諦めたのは挫折ではありません。あの経験があるから今がある」
プロ野球選手になりたいという一心で生活してきたのに、その原動力となっていた〝ガソリン〟を失い、何のために生きるかまで考えてしまった。野球のことを考えるのがつらかったので、考える時間ができないように無理やりアルバイトを詰め込みました。うどん屋さんの早朝のバイトから、ジムトレーナーだったり、居酒屋だったり、一時は三つぐらい掛け持ちしていましたね。 大学4年生になって、地元の人たちに「野球やめたよ」と報告にいきました。小中学生の頃のチームメートや親戚から、「お疲れさま。ありがとう」って言われたんです。いかにみんなが僕を応援してくださっていたか。こういう人たちに恩返しができる仕事がしたいと思いました。 応援されてきた人生から、応援する人生に。サンドウィッチマンさんが東日本大震災の復興支援で「東北頑張れ!」ってみんなを鼓舞しているのを見て、芸人さんってこうやって勇気を与える仕事なんだというのが印象的で、「これだ」と思いました。
プロを目指して諦めた経験が挫折だとは、今は感じません。あの経験があるから今があると思っているので。一生懸命に夢を持って、ひたむきに、魂を燃やして生きる大切さを、自分の体験もメッセージの中に乗せて伝えることができます。夢を持って頑張ることで人って輝きますから。 ▽人と人とをつなぐツール 今は独立リーグのルートインBCリーグ、栃木ゴールデンブレーブスで野球をしています。独立リーグって月に10万円とか、ぎりぎり生活していけないぐらいの待遇なんです。他にアルバイトをしないと生きていけないぐらいの給料。でも毎日、本気の本気で朝から晩まで練習しているわけですよ。プロ野球はそれほど目指したくなる舞台、人間にパワーを与えられるような存在なんだなと日々感じています。 どの収録の現場でも、楽屋や本番の横のたまり場ではプロ野球の話題になります。初対面の先輩でも「野球をやっていたんだよね?どこファンなの?」と聞かれるなど、人と人とをつなぐツールで、性別や年齢を問わずみんなで一つになれる共通言語になっています。食レポやバラエティー番組では「ストライクゾーン」「うちの4番バッター」と野球に例えるとうまく伝わる。長い歴史と、愛される存在であることを感じます。間違いなく人間が熱くなれるコンテンツ。
高校野球も応援しています。僕も甲子園という夢や目標を持つことで、つらい経験も自分の成長のためだと思って乗り越えることができました。何よりも好きな野球を全力で楽しむことを忘れずに、目の前の勝負に挑んでほしいと思います。 いろんな結果がありますけど、悲観的にならず、自分を責めずに、どんな結果も前向きに捉えてほしい。成功か失敗かに関係なく、一生懸命に本気でトライしたことは、必ず自分自身の成長につながります。皆さんなら「やればできる!」と伝えたいです。