<挑む・’24センバツ>東北出場チーム紹介/上 青森山田 コーチ、選手の個性重視 「自ら考え」1球ごとに強く /青森
「次、いこうか」。寒空を小雪が舞う中、青森山田の室内練習場に力強いかけ声が響いた。今季の青森市は記録的な暖冬となったが、それでもグラウンドは一面の雪。全国制覇を達成したサッカー部のグラウンドは人工芝が敷かれているが、野球部は天然芝だ。例年春までは使えず、体作りの期間が続く。兜森崇朗監督は「雪のない地域の学校にも負けない熱い練習を積み重ねていきたい」と話す。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 夏の甲子園に11回出場した青森山田。1999年には8強入りし、県内では強豪として知られる。一方、センバツ出場は今回、8年ぶり3回目だ。新チームとなって臨む秋季は、県大会で過去12回の優勝を誇りながらも、続く東北大会では2015年を最後に優勝がなく、センバツからも遠ざかっていた。 新チームの一体感をいかにスムーズに高めていくか――。近年、兜森監督が心がけてきたのが選手、コーチの個性を最大限にいかすチーム作りだ。「最初から監督が前に出ると選手、スタッフの良さが出てこない」と、部員を班分けし、部長と2人のコーチがそれぞれ受け持つようにした。チーム内の風通しがよくなり、ついに昨秋は全勝で東北大会の頂点へ駆け上がった。「失敗しながらも自分たちで考え、個性で乗り切って、1球ごと、1打席ごとに強くなってきた」(兜森監督) 室内練習が中心となる冬塲、特に注力するのは、今大会から本格導入される低反発の金属バットへの対応だ。主将の橋場公祐(2年)は「(打球の速度や飛距離が落ちることで)守り勝つ野球がすごく重要になる」と表情を引き締める。 今冬は毎日の練習に例年以上のウエートトレーニングを取り入れ、各選手に「身長マイナス98」キロの目標体重が設定された。長打力を身につけようと、昨年から既に新基準のバットで練習を重ねている選手もいる。 投手陣の練習には昨年から球の回転数や軌道などを分析できるシステム「ラプソード」を導入。エース関浩一郎(同)、昨秋の東北大会決勝で無安打無得点を達成した桜田朔(同)も「数値に表れると投球のイメージがつかみやすい」と口をそろえ、手応えは上々だ。 昨秋の明治神宮大会は初戦で星稜(石川)に2―3で敗れ「見たことないくらい雰囲気が落ちた」と橋場。ただ、惜敗した相手が勝ち上がり優勝したのを見て「自分たちにもやれるんだと思えた」。 新基準バットの導入でロースコアの試合が増えるとみられる中、兜森監督は「少ない得点機をものにするため小技にも磨きをかけ、青森県の野球レベルの高さを証明したい」。チーム悲願のセンバツ初勝利へ、前を見据える。【江沢雄志】 ◇ 第96回選抜高校野球大会に出場する青森山田、八戸学院光星(青森)、学法石川(福島)。東北を代表して甲子園に挑む3チームを全3回で紹介する。