【京都2歳S回顧】真の適性は未知も奥はある 新馬戦と異なる形で連勝したシンエンペラー
得意なリズムを探すプロセス
馬にとって走りやすいリズムはなにか。競馬に挑むにあたり、騎手が重視する点はここに集約され、各馬の脚質や得意な距離といった条件はリズムよく走るために探られる。実際に実戦を積みながら、ベストなリズムは作られるもので、だからこそ、若駒のレースは手探りのなか行われる。当然、競走馬は走った感想を述べてはくれない。1回で分かるほど、簡単ではない。何回も繰り返し、色々な条件を試しながら、自分が輝ける場所にたどり着く。その過程のはじまりが2歳戦にあたる。 【ジャパンカップ2023 注目馬】脚質、展開問わず力を発揮、能力は断トツのNo.1! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) 札幌2歳Sで好位から粘り込み、2、3着だったパワーホールとギャンブルルームは最終週の洋芝から京都に替わり、先行できず12、11着に沈んだ。これは決して弱いということではない。そう判断するほど、単純な競技ではなかろう。行けなかったのか、行かなかったのか。どちらにしろ、札幌2歳Sとは違うリズムで走り、結果に結びつかなった。中央場所の硬めでスピードが出る馬場が合わないのか、やはり先行して前で流れに乗った方がリズムをつくれるのか。今回の結果を受けて、さらに模索を続けていくことになる。
まだまだ奥があるシンエンペラー
これが2歳戦の難しさというものだ。一方で、1着のシンエンペラーは東京芝1800mの新馬戦で好位抜け出しで勝ってからの臨戦だった。スローペースで流れに乗れるセンスは感じたが、今回、京都内回りで後方から競馬を進め、連勝を決めるとは恐れ入った。デビューから2連勝で重賞制覇は珍しいことではないが、ここまで違うコース、違うスタイルで結果を残したのはそうはない。 最後は真っ直ぐ走ろうとしないなど遊びの部分すらあった。今回の結果を能力ととるのか。器用ととるのか。それとも「モレイラマジック」ととるのか。血統的には全兄に凱旋門賞馬ソットサスがいるバリバリの欧州型で、上記パワーホール、ギャンブルルーム以上に高速馬場への適性に疑問があった。実際、勝負所でJ.モレイラ騎手はかなり激しく手を動かしており、置かれたかに見えたが、直線では力強く馬群の真ん中を突き抜けた。なるほど、これは奥が深そうだ。 勝ち時計1.59.8は現条件になった14年以降で最速タイムになる。京都芝の状態がいいのもあるが、これは前半のペースが速かったことが大きい。まだリズムをつかめていない2歳戦だけに、基本はスローペースになる。過去9年、59秒台が出ていないのは、2000mという距離を意識し、リズムをつくることに徹した結果、スローペースになるからだろう。 今年は大外枠のカズゴルティスが前走のリズムを踏まえ、逃げを選択した。内回りで外からハナをとるには、ダッシュを効かせないといけない。結果的にこれが少しオーバーペースを呼び、1000m通過59.1と厳しめに流れた。3コーナー手前の小さな丘で、ペースは一旦ダウンするも、後半800m12.0-11.9-11.9-12.1とスパートしきれなかった。緩急がなかったことで、シンエンペラーにとって得意な形になったともいえる。 初戦の最後600mは11.9-11.1-11.0。これで3馬身差つけたわけで、ここからもシンエンペラーはまだまだつかみきれない部分が隠されているとみる。京都2歳Sの結果から、タイトな流れに強い差し馬と決めてはかかれない。2戦しか実戦を経験しておらず、まだまだ適性がどちらにあるのかつかみかねる。ただ、今回の勝負所での挙動をみれば、内回り向きではないように思える。次走が小回りだと、リズムをとれない可能性はある。