和田や甲斐野の心中は......FA・山川穂高の「人的補償騒動」に高木 豊氏が制度の見直しを提言!!
FA権を行使し、西武からソフトバンクに移籍した山川穂高の「人的補償」は、1月11日に甲斐野 央が移籍することで決着。しかし同日の一部報道では、ソフトバンクを長く支えてきた和田 毅の名前が挙がり、波紋を呼んだ。 FAで選手が抜ける球団は、移籍先の球団から選手をひとり獲得できるが、その対象にならないように28人の選手を選んだ非公開のプロテクトリストがある。そのため、「そこに和田が入っていないのか」「リストの情報が漏れている」という指摘や、「人的補償は必要なのか」という声も上がった。 この問題について、かつて大洋(現DeNA)などで活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木 豊氏に聞いた。 * * * ――今回の人的補償を巡る騒動について、率直な感想をお聞かせください。 高木 豊(以下、高木) 不快感しかないですし、「どこかで情報が漏れているんだろう」という脇の甘さを感じました。事態が二転三転し、和田や甲斐野の心中は穏やかではないはず。プロテクトリストが秘密厳守なのは、選手にそういったショックを与えないためなのですが......。 移籍が決まった後の、甲斐野の「ホークスには本当にお世話になり、感謝しかありません」というコメントは立派でした。ただ、もし彼が不満を口にしていたら、より騒ぎになっていたと思いますよ。 ――一部の報道のとおり、和田投手がプロテクトリストから外れていたとしたら、和田投手はどういった気持ちになるでしょうか。 高木 42歳という年齢を考えると、和田ならまだプレーできるかもしれませんが、一般的には現役生活もあと1、2年といったところ。 そう考えると、多少は「リストから外されるだろうな」と考えていたと思いますが、実際に外れていることを知ったら、「まさか自分が......」とショックを受けるでしょうね。人的補償という見返りを求めるこの仕組みは、そういう危険性をはらんでいます。 ――人的補償という仕組みは必要だと思いますか? 高木 まったく必要ないと思います。FAは、それを行使した選手が所属する球団、他球団の評価も聞いた上で、最も高く評価してくれる球団に移籍する制度ですよね。それに対して、「放出する側の球団になんの見返りがいるんだ」という話ですよ。 その見返りを、現有戦力から出すのも疑問です。それなら、FAでAランクの選手(球団内の年俸が上位3位の日本人選手)を獲得した球団が、選手を放出した球団に対して翌年のドラフト1位の指名権を譲渡するとか、Bランクの選手(球団内の年俸が4~10位の日本人選手)の場合はドラフト2位の指名権を譲渡するとか......。 そのほうが公平性を保てるはず。なぜユニフォームを着て頑張ってきた選手が、ほかの選手の権利行使に巻き込まれないといけないのかと思います。 ――人的補償制度が定められた理由は、FAで選手を放出したチームの一方的な戦力低下を防ぐため、というものです。これについては? 高木 戦力の偏りをなくすということであれば、ドラフトを完全ウェーバー制(最下位の球団から順に独占指名権が与えられる)でやらないと。なぜ、くじ引きで決められなきゃいけないのか。 それと、広島からオリックスにFA移籍した西川龍馬の人的補償で、ルーキーイヤーを終えたばかりの19歳の投手、日髙暖己(あつみ)が指名されました。 確かに素晴らしい素材ですが、1軍での実績はありません。それは、「一方的な戦力低下を防ぐ」という人的補償の趣旨とはかけ離れている。そういう観点からも人的補償はナンセンスです。