「容疑をほのめかす供述をしている」の意味とは?今すぐ誰かに話したくなる事件報道の裏側
容疑者が逮捕され起訴されて、裁判所に舞台が移ると、検察官が冒頭陳述というものを読み上げます。その際、「身上・経歴」という項目があり、容疑者(起訴されたあと裁判になると被告)の生まれ、育った地方、環境、家族構成、学歴、職歴などが明らかにされます。 このことを想定して、警察は住民票で住所を確認し、身上経歴に関する供述調書(身上経歴書)に謄写・添付したり、会社員ならその会社から在籍証明書のようなものをもらったりします。自営業者ならば、登記簿謄本を添付するのが普通です。
ただ、逮捕した時点では、こうした手続きが間に合わないことがよくあります。しかもたとえばブローカーのように、仕事の実態がよくわからなかったり、日ごろブラブラしているように見えて、一獲千金的に大商いをすることがあったりする人物の場合、無職なのか職業があるのか、警察としても判断に迷うときがあります。 そうした場合、容疑者が取り調べで「自分は不動産業です」と言ったとしましょう。会社のホームページも存在しないし、登記簿謄本をとっても該当がないが、まったく事業実態がないわけでもなく、近所の人も「不動産をやっているらしいですよ」程度のことは言っている……。裏付けはまだ取れていないが、とりあえず本人がそう言っているから「自称・不動産業」としておくか、となるのです。
三枝 玄太郎 :フリーライター、元産経新聞記者