【コラム】インドネシア戦で格の違いを証明した冨安健洋。先発に戻ってきた”日本の闘将”がもたらした”効果” | AFCアジアカップカタール2023
【サッカー日本代表・コラム】サッカー日本代表は、アジアカップ第3戦目でインドネシア代表に勝利し、グループステージ突破を決めた。この一戦で攻守に渡ってアグレッシブさを取り戻した日本に守備の安定感をもたらしたのは、最終ラインに帰ってきた闘将・冨安健洋だった。 ●【日本×インドネシア|ハイライト】上田綺世が先発起用に応える2ゴール…日本は2勝1敗で決勝Tへ
日本はグループステージ2試合を終えて1勝1敗の4失点。昨年から始まった国際Aマッチでの連勝中、いい守備からいい攻撃を連動させていたチームにとって、セットプレーからの失点も含め、守備の不安定さを明らかに露呈していた。 決勝トーナメント進出をかけた第3戦のインドネシア戦。そんな守備陣をまとめ上げたのは、怪我の影響等もあり、ここまでスタメン出場のなかった冨安健洋だった。ディフェンスリーダーとしての自覚を持ち、チームを牽引する姿がそこにはあった。 第2戦目のイラク戦で途中出場を果たした冨安は、チーム全体のデュエル勝率の低さに「それが一律に全てとは言わない」としつつ、このように思いを口にしていた。 「そこがベースである以上は求めないといけない。イラクがアグレッシブにやってくるのは分かっていた。そういうところで1個デュエルに勝つことで局面を変えられることもある。そういう意味では(今日の試合は)勝ちに値しなかったと思う」 そして、インドネシア戦の冨安はまさに闘将のような姿を見せる。「相手の勢いに飲まれず、自分たちから仕掛け、叩きのめす気持ちでやりたい」という思いのもと試合に入ると、序盤からアグレッシブな守備を披露。相手の状況や味方の距離感などを確認しつつ、最終ラインで声を出してラインを細かく調整すれば、ボールホルダーに対しては前向きな守備で対応した。これに他のDFたちも連動することでラインアップし、守備のコンパクトさを成立させていた。 加えて、久保建英が「冨安選手に行けって言われたら行かないといけないので前の選手は疲れました」と振り返るように、前線からのプレッシングを促すことで、ボールを奪われてからの即時奪回等も可能に。冨安が最終ラインに入ったことで守備のリズムを取り戻すことにつながった。 また、他のDFとの違いを示していたのは何度も攻撃の起点となっていたこと。鋭い縦パスを通して状況を打開すれば、ここで入れると難しいという時には一旦、時間を使って周りを経由する。その状況判断が抜群だった。 2点目につながったパスも見事の一言。密集地でのボールの奪い合いから、溢れたボールを堂安律に縦パスを入れる。このパスを起点にショートカウンターが発動し、最後には上田綺世のゴールにつながった。その場面を冨安はこう振り返る。 「縦パスというより、奪ったボールを下げないことはミーティングでも言われているところ。ボールが来る前に(堂安律がいる位置を)認知していた。そこで前につけられたのは良かったと思う。前半の入り、後半の入りも下がらずに自分たちから仕掛けると言っていたし、チームの共通認識としてこちらから仕掛けると。それが2点目、3点目につながったのは良かった」 もちろん、ここ2戦の課題をチームとして共有し、全体のコンパクトさを保ち、攻守の切り替え等を速くすることで”自分たちのベース”を取り戻したことは大きい。ただ、その中でも冨安が最終ラインに入ったことで生まれた安定感も間違いなくあった。 ここからの決勝トーナメントは、一つのミスや失点が敗戦につながってしまう可能性がある。そういった場面を少なくしていく上でも、冨安の活躍が日本の勝利のために大きな鍵を握っていきそうだ。 文・林遼平 1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。