アイドルを卒業したのに、なぜ再びアイドルに戻るのか…承認欲求か、リベンジか、やむを得ずか「アイドルはやめられない」時代のセカンドキャリア問題
卒業白書#9
「旅立ちの日に」という曲をご存じだろうか。2000年頃から全国に広まった卒業ソングで、10~30代にとっては卒業の定番だが、40代を境に知名度が一気に低くなる曲なのだ。卒業式でこの歌が流れたときにキョトンとしている人がいれば、40代以上と考えていいだろう。 【写真】在籍期間10年超のメンバーが23人もいるAKB48の「10年桜」
卒業をシステム化した「モーニング娘。」
卒業ソングが時代によって変わるように、アイドルの卒業も変化してきている。特に近年、アイドルがグループからなかなか卒業しなくなっている。 数多のアイドルグループに先駆けて、メンバーが脱退することを「卒業」という言葉で表すようになったのが、1985年に結成された「おニャン子クラブ」だ。中島美春、河合その子がグループを脱退する際には、コンサートで卒業式を行った。それ以降、メンバーが脱退する際に卒業という言葉が使われるようになった。 おニャン子クラブを生んだフジテレビのバラエティ番組『夕やけニャンニャン』のコンセプトは“放課後のクラブ活動”であり、メンバーはほぼ10代。グループから離れると同時に芸能界自体から引退をする者も多く、まさに文字通り“卒業”だった。 こうしたアイドルの卒業をシステムとして導入したのが、1997年にテレビ東京のオーディション番組『ASAYAN』から生まれた「モーニング娘。」だ。 モー娘。の卒業システムはおニャン子の影響と言われることも多いが、所属事務所であるアップフロントエージェンシーの山崎直樹社長(現アップフロントグループ会長)は当時の日経新聞やサイゾーのインタビューの中でメンバーの卒業、新メンバーの加入について「80年代のアメリカの男性アイドルグループのシステムを真似た」と話している。 この卒業、新加入というシステムを導入することで、モー娘。というブランドは残しつつ、新鮮なメンバーを加入させることでマンネリ化を防ぎ、グループへの興味を持続させることができるようになった。 この結果、それまでアイドルのグループとしての活動期間はキャンディーズは6年、ピンク・レディーは4年7か月、おニャン子クラブは2年半だったが、モー娘。は26年と、四半世紀を超えるほどの長寿グループとなった。 そして、このグループの長寿化とともに起こったのが、アイドルの在籍期間の長期化だ。