河村たかしと「名古屋という異世界」の真実…圧倒的人気のウラには「ヤバい体力」と「独特すぎる選挙戦略」があった
名古屋という「異世界」
衆院選で維新が全勝した大阪だけでなく、いまや名古屋もまた、中央政界とかけ離れた「異世界」となっていることに、全国の国民は気づいていない。いったい、何が起きているのか。 まず特筆すべきは、その圧倒的な選挙力である。「河村さんの人気の根底には、独特の選挙手法がある」と語るのは、親交があるノンフィクションライターの窪田順生氏だ。 「昨今では全国の政治家がマネしていますが、実は自転車で選挙区内を回る、『本人』と書かれたタスキをつける、といった選挙運動を最初にやったのは河村さんなんです。 加えて、以前は後援会のバスツアーを定期的に開いていて、よく本人がバスに同乗していた。参加した地元のおばちゃんは河村ファンになり、勝手に支持の輪を広げてくれる。いわば、中高年女性をターゲットにした『純烈』のような手法を何十年も前から実践していたわけです」 体を張った選挙をこなすには体力も要求される。かつて、河村氏とともに政党「減税日本」を立ち上げた元衆院議員・小林興起氏は、その点にこそ舌を巻いたという。 「河村さんは選挙カーもウグイス嬢も使わず、中日ドラゴンズの帽子を被って、自転車で選挙区をくまなく回る。当選したらバケツで水をかぶる。60、70にもなってそんなことができる候補者はいませんよ。 私も自転車行脚はやったことがあるけど、すぐに足がつって、とても無理だった。彼は体がでかくて、体力が人並み外れているんだよ」
裏があるのか、ないのか
ふつうの政治家がこうした行動をとれば、たいてい「一時的なパフォーマンスだろう」と見抜かれるし、事実、選挙期間が終われば有権者のことなど見向きもしなくなる政治家がほとんどだ。 しかし、外から見ると少し不思議にも映るが、名古屋人は「河村さんは、打算ではなく本気で市民と触れ合おうとしているのだと思う」と口を揃える。 中京大学現代社会学部教授で、地方政治やポピュリズムを研究する松谷満氏が言う。 「実際のところ、名古屋市民や愛知県民も、河村さんが何をやろうとしているのか、公約が本当に達成できているのか、といったことはよく知らないでしょう。ただ、そうした政治家としての評価以前に『身近なおっちゃん』として親しんでいるのだと思います。 バスで役所に通勤する。道端でたむろしている中高生に『ハウアーユー?』などと話しかける。記者との懇親会も、つねに自宅近くの安居酒屋……。何か裏があるんじゃないかと思うのがふつうですが、河村さんには裏表を感じない、という市民が多いのです」 名古屋市民の多くは、河村氏には「実績がある」と言う。しかし、それは本当なのだろうか? 後編記事【なぜ河村たかしは「名古屋でだけ最強」なのか…? かつての同志が「名古屋市民が知らない弱点」を語った】で、15年務めた名古屋市長としての実績を分析してみよう。 「週刊現代」2024年11月16日・11月23日合併号より
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