ウィリアム・ボールドウィンが消防士としての成長を好演!火事の恐ろしさ伝える映画「バックドラフト」
消防士を主役とした映画「バックドラフト」はアクション、スリル、サスペンスなどあらゆる要素が組み込まれた作品となっている。 【写真を見る】『バックドラフト』より バックドラフトはユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションでもおなじみの火災現場における現象のこと。ある一定の条件下で起きる爆発を指し、映画の中でもキーワードのひとつとなっている。 本作品の中心に据えられているのが、消防士である父を火災現場で亡くしながら、ともに消防士となったスティーブン(カート・ラッセル)とブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)の兄弟だ。だが、兄スティーブンが消防士一筋で、第17分隊隊長と現場での信頼も厚いのに対し、弟ブライアンは紆余曲折あってようやく消防士に。初の現場でも女性と見間違えて、マネキンを"救出"してしまうという失態も犯して周囲にも笑われてしまう。 主人公であるブライアンにとって大きなコンプレックスとなっていたのが優秀な兄の存在。世の中の多くの兄弟同様、兄の能力次第で弟は常に比較され、勝手に期待されたり失望されてしまう。ブライアンとスティーブンは決して兄弟仲が悪いわけではないが、ブライアンはコンプレックスを抱えているゆえに兄に認められていないという不満を抱えていた。 もっとも、兄であるスティーブンも全くもって完璧な人間ではない。職場では信頼も厚い隊長であるが、プライベートでは妻と一人息子と別居中。火を読むという特殊能力を持っていながら、家庭での問題を解決することはできていないというのもリアルなところだ。 そんな兄が指揮する第17分隊の下で訓練を積んでいるブライアンだが、挫折を経験する。自身が躊躇した火の渦の中にスティーブンは飛び込んで子供を救出したのだ。これまでも「兄に決して負けていない」とライバル心を燃やしていたブライアンも目の前で兄との差を痛感して意気消沈。ブライアン演じるボールドウィンは眉をハの字にしたような情けなく見える表情と吐き捨てるような喋り方で、末っ子気質の弱さと堪え性のなさを表現し、「こうなるよね」と視聴者に向けて納得感をもたらしてくれる。 兄の存在から逃げるように現場を離れ、火災捜査官助手の職に移ったブライアン。そこでも元現場であるプライドが見え隠れするのが彼らしいが、ある種逃げの選択をしたことで炎の本質を理解することとなる。火がどのようなもので、どう広がっていくかをリムゲイル捜査官(ロバート・デ・ニーロ)の下で学ぶ。この"挫折フェーズ"があることにより、後半のブライアンの大きな成長を素直に受け入れることができるのだ。 その成長の一方で、後半は放火犯は誰かを探るサスペンス要素が強くなっていくのも魅力のひとつ。手がかりをもとに推理していくことになるのだが、アクションのおまけに過ぎない、というものには決してなっておらず、ひとつの作品の中で異なる楽しみを与えている。 クライマックスの見せ場は、まるで生き物のように立ちはだかる炎とブライアンの対峙シーンだろう。今までだったら怯えて逃げ去っていたであろうブライアンは目をそらすことなく火をしっかりと見つめ、対処していく。その頼もしい姿は兄やかつての父を彷彿とさせ、眼前で弟の活躍を目の当たりにしていたスティーブンの「さすが俺の弟だ」という言葉はこちらの涙腺を刺激する。 激しい火災現場の中でスティーブンは命を落とし、改めて火事の恐ろしさが伝わってくるが、ラストシーンではたれた眉で弱気な表情を浮かべるブライアンはもうそこにはいない。後輩の指導をしながら、次の現場へと向かう精悍な消防士だけが映る。ハンス・ジマーが生み出す荘厳な音楽もあって、後世に語り継ぎたい良作となっている。 文=まっつ
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